・「ジョブ型」と「メンバーシップ型」
・仕事を個人で取ってくる力
・「個」の力で何でもできる時代
おはーん、ペーパー先生です。
9月上旬にオンラインで開催された経済同友会の夏季セミナーで、
サントリーホールディングスの新浪剛史(にいなみ・たけし)社長は、
「個人は会社に頼らない仕組みが必要」だとコメントし、「45歳定年制」を提唱しました。
このブログの内容はラジオでも解説しています。
これには非常に大きな反響があり、
「企業のリストラを推進するような話だ」
「ゼネラリストを養成する現在の仕組みに変化が必要」
「個人で稼ぐ力を付けるきっかけになる」
など、実にさまざまな賛否の声が上がりました。
今日はIT業界に身を置いている先生が、「45歳定年制」について深堀していきます。
「ジョブ型」と「メンバーシップ型」
IT業界は物理的に何かを作っていくわけではありませんから、
新しい働き方という点で「45歳定年制」を捉えた時に、
いくつか方法論がありそうだなと考えています。
仕事範囲の定め方で定義が分かれる「ジョブ型」と「メンバーシップ型」。
日本ではベンチャーでない限り、その多くが「メンバーシップ型」に該当します。
しかし一方では、このような見方もできるのではないでしょうか。
開発部門のマネジメントを行っている先生は、コロナ禍で、およそ半数が在宅勤務への移行しているいま、思うことがあります。それは、在宅で行えている開発職種の業務は、個人事業主と実態は変わらないということです。チームリーダーからの支持を受けて、プログラムを組んで納品をするというフローが、外部パートナーや個人へ発注するのと本質的な違いがないからです。少々乱暴に言えば、事前に契約書の締結が必要か否かの違いぐらいです。仕事内容が事前に定められている「ジョブ型」に極めて近い考え方であることが、IT業界の在宅勤務開発者を、このように捉えることができる理由になっているわけです。
開発を支援するアシスタント業務などの非開発者の場合。言葉を選ばずいうと何でも屋ですから、こちらは職務内容を限定せずに幅広く何でもこなす、まさに「メンバーシップ型」の典型と言えます。こうした仕事の場合、その会社の中でしか活きない経験や知識だけになっているケースも少なくありません。つまり外で稼ぐ力が備わっていないわけですから、会社依存が必要となり、急に45歳定年、となって真っ先に困るのはこの分野に該当する人々だと言えます。終身雇用を会社が保障してくれないいま、個人で稼ぐためのスキルを意識的に学んでいくことをしなければ、かなりリスクが高いわけです。
仕事を個人で取ってくる力
現在の会社での仕事が「ジョブ型」か「メンバーシップ型」のいづれに近いか。
それによって「45歳定年制」の受け止め方も変わると思います。
新卒採用され1つの企業で長い時間を過ごすというのは、
内向きスキルのみにベットしている状態です。
・内向きのスキル(社内作法、派閥、社内システム運用、社内人脈)
・外向きのスキル(専門性、業界知識、語学、プレゼン力、社外人脈)
社内で活きる技術や知識があることと、仕事を個人でも取ってこれることはイコールにはなりません。
外で稼ぐためには、例えば「ココナラ」や「ランサーズ」などのスキルシェアサービスを活用して、
自分のやれることは何か?強みは何か?他にはない特徴は何か?
このようなセルフプロデュースしていく必要があるからです。
個人と個人がスキルを持ち寄り、モノづくりをしていくことは、
IT分野において難しいことではなくなりましたから、あとはそれの使い方次第になります。
つまり、
■「ジョブ型」と考えられる職種
→強みそのものと、それをアピールしていくプロデュース力を磨く。
■「メンバーシップ型」と考えられる職種
→まずは個人で稼ぐ力を身に付ける。
こんな整理ができると思います。
「個」の力で何でもできる時代
このブログでは昨年から「個」の力を高めていく必要性を発信してきました。
少なくても「パソコン」と「アイデア」と「スキル」があれば
新しいサービスを生み出していくことのできるIT分野は、
企業でなければできないこと、というのはほぼ無くなったのではないかと思います。
資金が必要であれば、クラウドファンディングで募ればいいし、
オフィスが必要であれば、シェアオフィスやシェアハウスなどの利用もできる。
工夫次第でなんでも揃えることができるからです。
新入社員の際は安く働かされ、年齢が上がると給与が上昇して元を取る、いわゆる賃金カーブ。
この「元を取る」フェーズの人が、「45歳定年制」の導入では損になるという意見もありますが、
そもそも何もできない新人が業績に寄与しない中で、
将来の活躍を見込んで会社から給与を先行投資されていることを踏まえると、
どっちが得か損という話ではそもそもないように思います。
例えば、業績に貢献するであろう20代後半から30代後半にかけて、
企業は先行投資をしっかり回収し、その後の40代以降は
必要に応じて企業と社員は業務委託契約を結ぶ。
電通やタニタではそのような取り組みが一部で始まっていますが、
こうした、両者の関係値を段階的に緩めていくという打ち手は一つの解決策かもしれません。
「45歳雇用契約選択制」のような線引きを定量的に立て、
「個」をプロ集団として育てていくようになれば、企業も個人も意識が変わりますから、
スキル磨きに対する姿勢も劇的な変化を迎えるように思います。
敷居が比較的に低いであろうIT業界で積極的に議論が行われることを祈ります。
では、ごきげんよう。
人は迫られないと学ばない。