・格差是正で必要なのは
・アフガニスタン人から学ぶ
・センスの無い政府
政府が金融所得課税の見直しを、2022年度税制改正に向けて議論する方針を打ち出し、
その後、火消しに追われました。
少なくても22年度の議論には盛り込まないということです。
このブログの内容はラジオでも解説しています。
岸田首相は総裁選立候補時から、「成長と分配の好循環」ということで
富裕層の富を分配していく一手として、金融所得課税の見直しを視野に入れているとされます。
一律20%(所得税15%、住民税5%)となっている
株式の配当や売買による税金を上げていき、その原資を分配に回していくことを意味するわけです。
これが一律なのか、もしくは金融所得の額に応じて税率を変えていくのはまだ分かりませんが、
ただでさえ世界的に魅力の乏しい日本の株式市場が、
先日までの8営業日値下りを続けた日経平均からも明らかなように、
金融所得課税の見直しが、投資家心理を急速に冷やしたことは言うまでもありません。
格差是正で必要なのは
アメリカのバイデン政権でも富裕層の株式などにおけるキャピタルゲイン税率を
20%から上げる案を検討していることはすでに報じられています。
しかしそもそも経済最強国のアメリカと日本を同じものとして考えるのは早計です。
経済協力開発機構(OECD)によると、
上位1%の富裕層が持つ国内の資産に占める割合は
🇺🇸アメリカ:42%
🇬🇧イギリス:20%
🇯🇵日本:11%
このようになっています。
また、以前このブログでも取り上げたように日本人の家計のほとんどは現預金。
その多くが投資に回っているアメリカとは増税による効果もかなり違いが出ると思われます。
せっかく、つみたてNISAなどの優遇制度を通じて、
貯蓄から投資にむけて緩やかに動き出している中で、いきなり金融所得課税を選択肢に上げ、
「財源が足りないからお金のあるところから抜いて皆に配ろう」
という、まるで株式をやっている人=お金持ちだというような
非常に短絡的な打ち手にしか思えません。
そもそも格差是正をするために必要なのは果たして分配なのでしょうか?
アフガニスタン人から学ぶ
先日、タリバンがおよそ20年ぶりにアフガニスタン全土を掌握し、
アメリカ軍のあまりにも性急な撤退作戦が国際社会から批判を集めました。
また、同時に多くのアフガニスタン人を軍の大型輸送機に乗せて撤退する様子も世界に驚きを与えました。
まさにすし詰め状態の機内は、荷物を持つ者はほぼおらず、
身体一つでの逃避行であることが伺えます。
読売新聞オンラインの記事ではこのような2つの事例が紹介されています。
<女子校の共同創立者シャバナ・バシジラシクさん>
アフガンの全寮制女子校が、学校ごとアフリカ東部の国ルワンダに移り、そこで授業を続けている。学校の共同創立者シャバナ・バシジラシクさんはCNNのインタビューで父親からのコメントをこう紹介した。「父は『持っている物はすべて失い、お金も盗まれるかもしれないが、あなたの中に存在するものは常にここにある』と話した。頭を指さして『教育は人生の最大の投資(Your education is the biggest investment in your life)だ』というのが口ぐせだった」
<元アフガン通信相のサイード・サダトさん>
複数の欧州メディアは、アフガンで2016年から18年まで通信相を務めたサイード・サダトさんが、ドイツ東部ライプチヒで食品デリバリーの仕事に従事しているという話題を報じた。AFP通信の記事の中で、サダトさんは食品デリバリーの仕事について「恥ずかしいとは全く思わない。仕事があるということは需要があるということ。誰かがやらなくてはならない」と語っている。
【出典】アフガン情勢に学ぶ「教育にお金をかける」意味(読売新聞オンライン)
2021/10/06 15:00
ここから分かることは、お金を生み出すための知識や知恵。
そして何よりも情熱や行動力などの重要さです。
お金を持っている人というのは、そうした力を駆使して資産を築いています。
もし最初からお金だけを渡していれば、使い切った後には何も残らないでしょう。
さいごに
何が言いたかったのかというと、
「お金持ちのお金の一部をそうではない人たちに広く分配したところで皆が消費して終わりですよ」
ということ。
もちろん分配の仕方にもよるとは思いますが、
結局、お金をどのように生み出していくのかという知識のベースをしっかり作り、
その階段を上がるきっかけを用意してあげて、
稼ぎ方や使い方の理解を深める方が先なんじゃないかと思います。
それは小学生から後期高齢者まで隅々やった方がいいし、
そうした教育への投資をしていくための原資ということであれば理解ができますが、
素地もないまま「分配」だけを言われても、ピンときません。
成長すらしていないのに先に分配をしてどうするのという疑問と、
本来なら預貯金として眠っている個人の金融資産をどんどん経済に回っていくようにする方が
圧倒的に優先すべきなのではないか、というのが先生の考えです。
8日(金)に行われた所信表明演説で岸田首相は、
金融所得課税に関する話題を一切出しませんでしたし、
その後のテレビ出演でも、
「当面は触るということは考えていない。そこばかり注目されてすぐやるんじゃないかという誤解が広がっている」
とコメントしています。
株価下落というところから金融市場のメッセージを受け取ったと考えたいところですが、
そもそも、就任直後にも言及をしていたわけで、
マネックス証券の広木隆(ひろき・たかし)チーフ・ストラテジストの言葉を借りると、
もう、本当に「センスがない」の一言に尽きます。
【出典】下半期スタート!波乱の予感?【モーサテサタデー!】#74(2021年10月9日)(テレ東BIZ)
2021/10/09
国を動かしていく人たちが社会を知らなすぎなのではと感じます。
10年程度、社会人として民間企業などで仕事をした人ではないと、
政治家や官僚になれない、もしくは民間企業でのインターンを必須にするなど、
国を動かしていく人たちが、社会を知らないという分断をなんとかして欲しいです。
「私の特技は人の話をよく聞くこと」と岸田首相は話してましたから、さすがに8日連続の日経平均下落で市場の声を聞いたのでしょうね。なお多くの市場参加者は課税に関係のない外国人投資家。新政権が"成長"より先に金融所得課税なんて提示するものだから「大丈夫なんか!?この政権」となったのだと推察 https://t.co/03bRSZqiw8
— ペーパー先生 (@papercapinfo) October 11, 2021
では、ごきげんよう。
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オワコン、日本。