・施政方針演説とは何か
・バイデン大統領の施政方針演説 要旨
・歴代大統領が最も多用したワード
バイデン米大統領は米国時間4月28日夜、上下両院合同会議で就任後初の施政方針演説を行いました。
日本のニュースでも大きな話題として取り上げられていましたね。
「雇用(job)」「新型コロナ(COVID)」「米国(America)」「民主主義(democracy)」「気候(climate)」
これらのワードが極めて多く目立つ内容となりました。
今日はバイデン大統領の施政方針演説要旨と、歴代大統領の最頻出ワードをやわらか振り返りします。
施政方針演説とは何か
まず、施政方針演説とは何でしょうか?
米大統領が議会の上下両院合同会議で表明する一般教書演説のこと。大統領は合衆国憲法に基づき、内政・外交の状況を分析して議会に報告し、自身の政策を議会に提案し、必要な立法措置を講じるよう要請する義務を負っている。一般教書演説で今後1年間の米国の内政や外交、経済など政策全般についての方針を明らかにする。「予算教書」「大統領経済報告」と並ぶ三大教書の一つ。なお、就任直後の議会演説は「一般教書演説」ではなく「施政方針演説」と呼ばれる。(日経電子版から)
バイデン大統領の施政方針演説 要旨
バイデン大統領は演説の冒頭で、女性を示す敬称の「マダム」を使い、
「ありがとう、マダム・スピーカー(議長)、マダム・バイスプレジデント(副大統領)」と背後に座る2人、
ナンシー・ペロシ下院議長と、カマラ・ハリス上院議長(副大統領が務める)に呼びかけました。
その上で「この演壇でこのような言葉を発した大統領はこれまでいなかった。そういう時代だ。」と話すと、
議場内からは大きな拍手が起こりました。
【出典】「マダム・ヴァイスプレジデント」 米史上初、大統領が議会で女性副大統領にあいさつ(BBC News Japan)
2021/04/29
施政方針演説の壇上に女性2人が同時に並ぶのは史上初めてで、多様性を重んじるバイデン政権らしい光景となりました。
・米国は再び動き出した。危険を可能性に、危機を好機に、後退を強さに変える。
・就任100日以内に1億人へのワクチン接種を約束し、実際は2億2000万回分以上提供の見通し。
・全世帯の85%に1400ドルの給付金を送付し、1億6000万枚の小切手が送られ、130万件以上の雇用を生んだ。
・我々は21世紀を勝ち抜くために中国やその他の国と競争しており、より良く構築しなければならない。
・1世代に1度の米国自身への投資である米国雇用計画を提案しているのはそのため。
・「バイ・アメリカン」。米国人の雇用を生み、米国でつくられた米国製品を買うのに米国人の税金を使う。
・米国雇用計画はブルーカラーのための青写真だ。ウォール街がこの国を作ったのではない。
・中国の習近平国家主席は本気で世界で最も重要で影響力のある国になろうとしている。
・未来の競争に勝つには、家族、子どもたちに一世一代の投資をする必要があり、米国家族計画を発表する理由。
・私は年収が40万ドル未満の人々への増税はしない。企業と1%の最富裕層に公平な負担をしてもらう時が来た。
・年収40万ドル以上の最も裕福な1%の米国人について、最高税率を39.6%に戻す。
・テロや核問題、移民、サイバーセキュリティー、気候変動、パンデミック、あらゆる危機に単独で対処できる国はない。
・気候変動問題は私たちだけの闘いではない。これは世界的な闘いだ。
・中国を含め、すべての国が世界経済のなかで同じルールで競うことを意味する。
・私は習主席に「紛争を始めるためでなく防ぐために、インド太平洋地域で強力な軍事力を維持する」とも伝えた。
・ロシアのプーチン大統領に対し、事態をエスカレートさせるつもりはないが、行動は結果を伴うことを明確にした。
・イランと北朝鮮の核問題については、外交と厳しい抑止力をもって同盟国と緊密に協力する。
・米国で今、最も致命的なテロの脅威は、白人至上主義者によるものだ。
・私は銃の暴力という疫病から米国民を守るためにできる限り全てのことをする。
・移民は常に米国にとって不可欠な存在だった。移民を巡る消耗的な闘いをやめようではないか。
・米国の民主主義が長く持続するかどうかという問いは、古くもあり切迫してもいる。
・我々の憲法は「われら人民」という言葉で始まる。あなた方と私だ。遠い首都にある何かの力ではない。
・皆がそれぞれの役目を果たせば、民主主義は永続性があり、強固であると証明し、困難を乗り切るだろう。
・専制主義国家が未来を勝ち取ることはない。米国が勝ち取るのだ。未来は米国にある。
【出典】Remarks by President Biden in Address to a Joint Session of Congress(THE WHITE HOUSE)
APRIL 29, 2021
【出典】危機克服へ米国再構築 バイデン氏議会演説要旨(日経電子版)
2021年4月29日 22:00 (2021年4月30日 5:12更新) [有料会員限定]
就任100日となるバイデン大統領は、まずその100日での成果を振り返るとともに、
前政権の減税政策から大きな転換をし、増税と歳出増で経済成長を目指す姿勢を打ち出しました。
富の再分配を掲げ、
「米国雇用計画」
インフラなどに8年で2兆ドル超を投じる。
「米国家族計画」
育児・教育支援に10年で1.8兆ドルを投じる。
企業や個人富裕層への増税などを財源に計4兆ドルの構想推進に協力を求めました。
また、従来は内政方針が中心となる施政方針演説では珍しく、中国を始めとする諸外国にも触れられている点がポイントです。
歴代大統領が最も多用したワード
では、歴代大統領の施政方針演説ではどの話題に力を割いていたのでしょうか。
1934年のフランクリン・ルーズベルト氏から、2021年のバイデン氏までの88回の演説で、
最も多く対象のワードが登場した演説は誰だったかを、日本経済新聞社さんが調査しました。抜粋して紹介します。
<米国(America, American, Americans)>
ジョー・バイデン氏(2021年・11回)
<中国(China)>
ビル・クリントン氏(2000年・9回)
<協力(cooperate, cooperates, cooperated, cooperating, cooperation, cooperations)>
ハリー・S・トルーマン氏(1946年・10回)
<民主主義(democracy, democracies)>
ジョー・バイデン氏(2021年・16回)
<夢(dream, dreams)>
ロナルド・レーガン氏(1986年・12回)
バラク・オバマ氏(2011年・12回)
<経済(economy, economies)>
ハリー・S・トルーマン氏(1946年・33回)
<エネルギー(energy, energies)>
ジェラルド・R・フォード氏(1975年・25回)
<自由(freedom)>
ロナルド・レーガン氏(1988年・21回)
<希望(hope, hopes)>
ハリー・S・トルーマン氏(1946年・16回)
<投資(invest, invests, invested, investing, investment, investments)>
ビル・クリントン氏(1993年・29回)
<日本(Japan)>
ハリー・S・トルーマン氏(1946年・11回)
<雇用(job, jobs)>
バラク・オバマ氏(2013年・47回)
<人々(people)>
ビル・クリントン氏(1995年・73回)
<テロ(terrorism, terror, terrors)>
ジョージ・W・ブッシュ氏(2005年・15回)
<結束(unity, unities)>
リンドン・B・ジョンソン氏(1965年・6回)
<戦争(war, wars)>
ハリー・S・トルーマン氏(1946年・202回)
【出典】キーワードで読む米大統領演説 雇用・コロナ…重点は?(日経電子版)
2021年04月29日 公開
その時代を反映しており興味深いですよね。
景気悪化局面では「economy」が、失業者増加局面では「job」が多用されています。
また、「invest」は民主党大統領が、「freedom」は共和党大統領が多く使用している傾向にあります。
「war」は第二次世界大戦終結後、「terrorism」は米同時多発テロ事件以降に使われました。
同じワードでもポジティブとネガティブが反転したものもあります。
クリントン氏が多用した際の「China」は貿易相手国としてポジティブな側面で、トランプ氏以降はネガティブに使われています。
トルーマン氏の「Japan」は敵国として、その後に使われなくなったのは安定的な同盟国となったためです。
さいごに
国家でも企業でもチームでも、人を束ねて物事を進めていく際には方針が必要です。
先生も職場では部門責任者として、必ず期初に前期振り返りと今期方針を資料にして部内外に発信をします。
人間というのは、方針を掲げたとしても考え方の違いにより大なり小なりの不満は持ちます。
ただ、もっともストレスとなるのは、そうした意見の相違ではなく、
どこに向かっているかが、そもそもまったく分からない状態です。
船旅に例えると方針というのはまさにコンパス。
そうした視点で、米大統領の施政方針演説を見てみると非常に勉強になります。
こちらの記事も参考にいただければと思います。
では、ごきげんよう。
“Let him who would move the world, first move himself. ”
「世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ。」
ソクラテス氏(古代ギリシアの哲学者)