そのた

日米共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」サマリー

日米共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」サマリー
この記事で分かること

・テタテとハンバーガー
・過去の日米共同声明
・一言で表すと「中国抑止」

16日、菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領は日米首脳会談に臨み、

「気候変動」「サプライチェーン」「5G」「対中国」などの分野で

幅広く連携をしていく方針を示しました。

共同声明には「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」との名称がつき、

米中対立が深まる中で、日本としてはかなり踏み込んだ内容になった印象です。

今日は日米共同声明をやわらか紹介していきます。

テタテとハンバーガー

日米両首脳との会談は通訳だけを交えた形式「テタテ」で始まりました。

テタテとはフランス語で顔を突き合わせた2人だけの会話の意味を持ち、

その時の様子をバイデン大統領が自身の大統領用ツイッターに投稿しています。

めちゃくちゃおいしそうなハンバーガーが出されています!

テタテは20分間で、菅首相いわくお互い話に夢中で手をつけなかったそうです。

その後、政府高官を加えた拡大会合に移行し、16日午後(日本時間17日午前)に共同声明がまとまりました。

実にA4の紙で6枚、文字数は6000字程度。

参考までに、近年の日米首脳共同声明を紹介しておきましょう。

<参考:過去の日米共同声明>

時期:2018年9月
文字数:1000字弱
テーマ:米貿易赤字の削減など
首脳:安倍首相・トランプ大統領

時期:2015年4月
文字数:3000字強
テーマ:自由貿易体制の主導、安保協力の進展、気候変動の対処など
首脳:安倍首相・オバマ大統領

時期:2006年6月
文字数:2000字強
テーマ:経済、安全保障、感染症対策など
首脳:小泉首相・ブッシュ大統領

トップダウンで進んできたトランプ政権とは対照的に、

バイデン政権では実務者ベースで素地を作り、

それを積み上げて首脳同士が認識合わせをする、という従来型プロセスに回帰しました。

ブリンケン国務長官が、関係国を歴訪”無双”していることでもそれが良く分かります。

「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」サマリー

では、日米共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」のサマリーを紹介します。

はじめに

・ジョセフ バイデン大統領は、同政権下で初めて米国を訪問する外国首脳となる菅義偉総理大臣を歓迎でき光栄に思う。

・日米両国は、インド太平洋地域、そして世界全体の平和と安全の礎となった日米同盟を新たにする。

・日米両国は、自由、民主主義人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序を含む普遍的価値及び、共通の原則に対するコミットメントで結び付いている。

・自由民主主義国家が協働すれば、自由で開かれたルールに基づく国際秩序への挑戦に対抗しつつ、新型コロナウイルス感染症及び気候変動によるグローバルな脅威に対処できる。

・争いの後に結ばれた日米同盟は、日米両国にとっての基盤となり、世界は幾度も変化したが、我々の絆はより固く結ばれた。

自由で開かれたインド太平洋

・日米両国は、国連海洋法条約に記されている航行及び上空飛行の自由を含む、海洋における共通の規範を推進する。

・米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した。

・米国は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認し、両国は尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。

・日米両国は、両国間のサイバーセキュリティ及び情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した。

・日米両国は、辺野古における普天間飛行場代替施設の建設、馬毛島における空母艦載機着陸訓練施設、米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転を含む、在日米軍再編に関する現行の取決めを実施することに引き続きコミットしている。

・日米両国は、在日米軍の安定的及び持続可能な駐留を確保するため、時宜を得た形で、在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意を妥結することを決意した。

・菅首相とバイデン大統領は、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。

・日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。

・日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。

・日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。

・日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。

・日米両国は、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での義務に従うことを求めつつ、完全な非核化へのコミットメントを再確認するとともに、国際社会による同決議の完全な履行を求めた。

・バイデン大統領は、拉致問題の即時解決への米国のコミットメントを再確認した。

・日米両国は、かつてなく強固な日米豪印(クアッド)を通じた豪州及びインドを含め、同盟国やパートナーと引き続き協働していく。

・日米両国は、インド太平洋におけるASEANの一体性及び中心性並びに「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を支持する。

・日米両国はまた、韓国との三か国協力が我々共通の安全及び繁栄にとり不可欠であることにつき一致した。

・日米両国は、ミャンマー国軍及び警察による市民への暴力を断固として非難し、暴力の即時停止、被拘束者の解放及び民主主義への早期回復を強く求めるための行動を継続することにコミットする。

新たな時代における同盟

・日米両国は、21世紀に相応しい新たな形の協力が必要であることを認識し、菅首相とバイデン大統領は「日米競争力 強靱性(コア)パートナーシップ」を立ち上げた。

・日米両国のパートナーシップは、持続可能な、包摂的で、健康で、グリーンな世界経済の復興を日米両国が主導していくことを確実にする。

・このパートナーシップは、①競争力及びイノベーション、②新型コロナウイルス感染症対策、国際保健、健康安全保障(ヘルス/セキュリティ)、③気候変動、クリーンエネルギー、グリーン成長/復興に焦点を当てる。

・日米両国は、生命科学及びバイオテクノロジー、人工知能(AI)、量子科学、民生宇宙分野の研究及び技術開発における協力を深化することによって、両国が個別に、あるいは共同で競争力を強化するため連携する。

・菅首相とバイデン大統領は、5G(第5世代移動通信システム)の安全性及び開放性へのコミットメントを確認し、信頼に足る事業者に依拠することの重要性につき一致した。

・日米両国は、活発なデジタル経済を促進するために、投資を促進し、訓練及び能力構築、安全及び繁栄に不可欠な重要技術を育成・保護、半導体を含む機微なサプライチェーンについても連携する。

・日米両国は、二国間、あるいはG7やWTOにおいて、知的財産権の侵害、強制技術移転、過剰生産能力問題、貿易歪曲的な産業補助金の利用を含む、非市場的及びその他の不公正な貿易慣行に対処するため引き続き協力していく。

・日米両国は、双方が世界の気温上昇を摂氏1.5度までに制限する努力及び2050年温室効果ガス排出実質ゼロ目標と整合的な形で、2030年までに確固たる気候行動を取ることにコミットした。

・菅首相とバイデン大統領は、①パリ協定の実施と2030年目標/国が決定する貢献(NDC)の達成、②クリーンエネルギー技術の開発、普及及びイノベーション、③各国、特にインド太平洋におけるその他の国における脱炭素化を支援する取組、の三本柱からなる「日米気候パートナーシップ」を立ち上げた。

・新型コロナウイルス感染症は、日米両国及び世界に対して、我々が生物学的な大惨事への備えができていないことを示した。

・日米両国は、健康安全保障(ヘルスセキュリティ)の推進、将来の公衆衛生危機への対応及びグローバルヘルスの構築のための協力を強化する。

・2021年3月12日の史上初の日米豪印(クアッド)首脳会議において、日米両国は日米豪印(クアッド)ワクチン専門家作業部会を立ち上げた。

・日米両国は、潜在的な衛生上の緊急事態の早期かつ効果的な予防、探知及び対処を通じてパンデミックを防ぐ能力を強化するとともに、透明性を高め、不当な影響を受けないことを確保することによって世界保健機関(WHO)を改革するために協働する。

・日米両国は、新型コロナウイルスの起源、あるいは将来の起源不明の感染症の検証に関する、干渉や不当な影響を受けない、透明で独立した評価及び分析を支持する。

・日米両国は、感染症の発生を予防/探知/対処するための全ての国の能力を構築するために両国及び多国間で協働し、新型コロナウイルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX」への支援を強化する。

・日米両国はまた、パンデミックを終わらせるため、グローバルな新型コロナウイルスワクチンの供給及び製造のニーズに関して協力する。

今後に向けて

・バイデン大統領は、今夏、安全/安心なオリンピック パラリンピック競技大会を開催するための菅首相の努力を支持する。

・両首脳は、東京大会に向けて練習に励み、オリンピック精神を最も良く受け継ぐ形で競技に参加する日米両国の選手達を誇りに思う旨表明した。

・日米両政府は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた我々の政策を調整/実施するためのものを含め、あらゆるレベルで意思疎通することを継続する。

・日米両国は、両国のパートナーシップが今後何十年にもわたり、両国の国民の安全と繁栄を可能にすることを認識し、確固たる同盟という考え方そのものへの投資を新たにする。

以上

【出典】日米首脳共同声明の全文(日経電子版)
2021年4月17日 16:00

さいごに

一言で表すと「中国抑止」。

「台湾」「香港」「新疆ウイグル自治区」についても明記され、

米国に全面的に同調をする形になりました。

この共同声明を受けて中国の在米国大使館の報道官は17日、

「強く不満を表明し、断固として反対する。(香港や台湾について)中国の内政問題だ。中国側は必ず国家主権、安全、発展の利益を断固として守る。」

とコメントを出し、強い反発をしています。

今回の日米共同声明の方向性というのは、先日の全人代(全国人民代表大会)で報告された内容と真逆にありますよね。

総まとめ!全人代から読み解く中国の将来
総まとめ!全人代から読み解く中国の将来中国で全国人民代表大会(全人代)が11日、閉幕しました。これは年に1度開催される国会にあたる重要会議で、国家の最高権力機関および立法機関として位置づけられる一院制議会です。表明される目標設定は、今後の世界経済や米中関係にも影響が大きく、2020年代の行方を占う上で、世界中が注目をしています。今日は、全人代から見える中国が目指す将来についてやわらか解説します。...

米国は中国が最大の貿易相手国ですから、

サプライチェーンを米中で分断させようとなれば経済への影響は必至です。

こうした綱引きに日本が飲み込まれている印象もあり、

今後、共同声明での文言解釈で色々と揺れそうな印象です。

まぁ、いずれにしても資産形成において米中関係は無視できませんから、

この辺りの動向は常にチェックしていきたいですね。

よろしければ、こちらの記事も参考にしてください。

米アラスカ州アンカレジでの米中会合で決定的となった分断社会
米アラスカ州アンカレジでの米中会合で決定的となった分断社会18日に米アラスカ州で行われた米中両国の外交担当トップ級会合は、冒頭のメディア公開の場で強烈な非難の応酬が繰り広げられました。異例の展開は、改めて米中対立の根深さを浮き彫りにしたわけです。22日、米国務省が公式サイト上で公開した冒頭発言の全文をもとに、今日は本会合で決定的になった分断社会の概況をやわらか解説します。...
今後の米中関係を経営者はどうみているか
今後の米中関係を経営者はどうみているか今年の世界情勢で最も注目をしていく必要がある米中関係。トランプ政権下で悪化した両国の対立がさらに深まるのか否かは、資本市場、引いては投資家にも大きな影響を与えます。米国では20日にバイデン新政権が誕生しますが、今日は、今後の米中関係を経営者はどうみているかについてやわらか解説します。...
資本市場の分断は進むのか
資本市場の分断は進むのか2020年11月、トランプ米大統領が中国人民解放軍と関係が深いとされる中国企業について、米国投資家による株式などの購入禁止を目的とする大統領令に署名しました。米財務省が2020年11月22日付で公表している「Non-SDN Communist Chinese Military Companies List」(いわゆる中国軍支配下にあると見なされる企業リスト)では、現時点で35社が記されています。今日は米中両国の資本市場における現状についてやわらか解説します。 ...

では、ごきげんよう。

今日のまとめ

会談中は高性能のN95マスク着用が義務付けられていたとのこと。(じゃあそもそもハンバーガー食べれないじゃん!笑)

よろしければ応援クリックお願いします!
にほんブログ村 資産運用(投資)
関連記事