・主要国のCO2排出削減目標
・気候変動対策を怠るとどうなるのか?
・11月開催のCOP26での注目ポイント
先月22日、バイデン米大統領が主催した気候変動に関する首脳会議(サミット)で、
各国・地域の首脳がオンライン参加し、CO2(二酸化炭素)排出削減に向けた目標を掲げました。
先進国だけが意欲的な削減目標を表明した一方で、
中国やインドを始めとする新興国では経済成長と環境対策とのバランス配慮などの声が上がり、
世界全体で取り組んでいくという雰囲気醸成には至らなかった印象です。
今日は気候変動対策のいまについてやわらか紹介します。
主要国のCO2排出削減目標
本サミットには40の国・地域の代表が出席し、脱炭素をめぐる国際協調を米国が主導していく決意表明の場でした。
それに先立ち、17日にケリー米大統領特使(気候変動問題担当)が訪中。
米中が協力して気候変動対策を行っていくことに向けた共同声明を発表しました。
経済や人権などの問題で対立が続く両国の中で、唯一この分野だけ
連携が取れるのかどうかを計る重要な場となったわけです。
今回発表された主要国のCO2排出削減目標は以下の通りです。
※カッコ内は2017年のセクター別燃料燃焼からのCO2排出量(IEA調べ)
🇨🇳中国(93億200万トン)
2030年までにピーク、60年より前に実質ゼロの目標を維持。
🇺🇸米国(47億6,130万トン)
30年のCO2排出量を05年比で50-52%減。
🇮🇳インド(21億6,160万トン)
30年までのCO2削減で対米協力。
🇷🇺ロシア(15億3,690万トン)
昨秋に30年の排出量を1990年比で7割に抑制する目標を策定。
🇯🇵日本(11億3,240万トン)
30年度に13年度比で46%削減。従来の26%から引き上げ。
🇩🇪ドイツ(7億1,880万トン)
EU加盟国と欧州議会が30年までの90年比55%以上削減で合意。
🇨🇦カナダ(5億4,780万トン)
30年までに排出量を05年比で40-45%削減。
【出典】バイデン氏「持続可能な未来へ行動を」気候変動サミット 先進国と途上国で溝も(日経電子版)
2021年4月23日 3:42 (2021年4月23日 7:16更新)
最大の排出国である中国の習近平国家主席が示した方針は、
・CO2排出量は30年までをピークにする。
・石炭消費量は26-30年にかけて徐々に減らす。
この2点であり、削減目標を示すどころか、逆にしばらくは従来の状況を続ける宣言をしたと受け取れます。
気候変動の分野だけは米中が手を取り合えるのではないかという淡い期待は脆くも崩れたわけです。
気候変動対策を怠るとどうなるのか?
さて、この気候変動問題。
我々に生活もじわじわと影響が出てきています。
米気象安全保障センターが、世界の平均気温1-2度の上昇を想定したシナリオを以下のように出しています。
<2050年までに予想される気候変動による政治リスク>
北米
・移民増加。
南米
・移民増加。
・国家の脆弱化。
欧州
・格差の拡大。
・移民の急増。
インド太平洋
・大国の対立激化。
中東
・国家の脆弱化。
・紛争の増加。
アフリカ
・国家の脆弱化。
・過激主義の拡大。
【出典】温暖化、世界の平和を壊す 紛争や難民急増の恐れ(日経電子版)
2021年4月12日 11:00 [有料会員限定]
この話しを、「風が吹けば桶屋が儲かる」的にまとめますと、
・気候変動対策を怠る。
↓
・世界の気温が上昇する。
↓
・干ばつや水害、海面が上昇する。
↓
・大量の移民や難民が世界にあふれる。
↓
・脆弱な国家は破たんする。
↓
・テロ組織や過激派が拡散する。
↓
・食糧難や資源の奪い合いが過熱する。
↓
・インド太平洋の大国間対立がさらに激しくなる。
つまり、気候変動問題というのは安全保障問題でもあると言い換えることが出来ます。
世界中で災害が起これば、救援に駆け付けるのは各国・地域の軍隊です。
国内でも災害対応で自衛隊が駆けつけるシーンを目にする機会が増えました。
こうした負担が増えれば、当たり前ですが本来の安全保障へ直接的な打撃になるわけです。
なお、気象災害による被害が近年で多かった地域は以下の通りです。
日本は気候変動に関して、他人事ではぜんぜんありません。
<2018年>
1位 🇯🇵日本
2位 🇵🇭フィリピン
3位 🇩🇪ドイツ
4位 🇲🇬マダガスカル
5位 🇮🇳インド
6位 🇱🇰スリランカ
7位 🇰🇪ケニア
8位 🇷🇼ルワンダ
9位 🇨🇦カナダ
10位 🇫🇯フィジー
<2019年>
1位 🇲🇿モザンビーク
2位 🇿🇼ジンバブエ
3位 🇧🇸バハマ
4位 🇯🇵日本
5位 🇲🇼マラウイ
6位 🇦🇫アフガニスタン
7位 🇮🇳インド
8位 🇸🇸南スーダン
9位 🇳🇪ニジェール
10位 🇧🇴ボリビア
※ドイツ環境NGOのジャーマンウォッチ調べ
さいごに
11月には、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開かれます。
途上国が求めるような支援体制を先進国が提供することができるかどうかが焦点です。
議長国を務める英国のジョンソン首相の手腕も試されることになりますね。
気候変動に対する企業の責任をより明確にする取り組みの一環として、
米資産運用大手ブラックロックさんは今年2月、投資先企業に対して、CO2排出に関する完全なデータ開示をするよう求めました。
また昨年12月には、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするための計画を
企業に策定するよう求めることも明確にしており、企業活動はこれまでになく厳しい目にさらされています。
投資家自身もこうした問題を無視できない状態となっているわけですね。
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では、ごきげんよう。
気候変動対策と経済成長の両立は果たして可能なのか?