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中央銀行デジタル通貨(CBDC)のいま

中央銀行デジタル通貨(CBDC)のいま
この記事で分かること

・CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは
・各地域での発行状況
・CBDCのメリット/デメリット

おはーん、ペーパー先生です。

日本銀行(日銀)は5日、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)について、

基本的な機能を確かめるための実証実験を始めたと発表しました。

日銀が昨年10月に発表していた実証実験フェーズは全体で3つ。

①概念実証フェーズ1
システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行、流通、還収の基本機能に関する検証を行う。

②概念実証フェーズ2
フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する。

③パイロット実験
概念実証を経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れて検討していく。

【出典】「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の公表について(日本銀行)
2020年10月9日

今回開始されたのは①の部分となり、期間は来年3月までの1年が想定されています。

その後、②を経て実現可能かどうかを検証し、

必要と判断されれば③の要否について検討、という流れです。

一方で、日銀は「現時点で発行する計画はない」という姿勢を崩しておらず、

要は、かなり及び腰な取り組みとなっています。

今日はCBDC(中央銀行デジタル通貨)のいまについてやわらか解説します。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは

まず、CBDCが一体何なのかについて紹介します。

CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは

次の3つを満たすものであると言われている。
・デジタル化されていること。
・円などの法定通貨建てであること。
・中央銀行の債務として発行されること。

【出典】中央銀行デジタル通貨とは何ですか?(教えて!にちぎん)

では、デジタルのお金という点でビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)や

Suicaなどに代表される電子マネーとは何が違うのでしょうか。

<CBDC(中央銀行デジタル通貨)>
発行:中央銀行
特徴:法定通貨を裏付けにデジタル発行
価格:変動幅が小さい
事例:デジタル人民元、サンド・ダラー、バコンなど
決済:対象地域ならどこでも利用可能

<暗号資産(仮想通貨)>
発行:なし、民間企業、団体など
特徴:法定通貨を基準としない独自通貨
価格:変動幅が大きい
事例:ビットコイン、イーサリアム、リップルなど
決済:対象店舗によって利用可能

<電子マネー>
発行:民間企業
特徴:法定通貨と交換
価格:払い込み法定通貨と同額
事例:Suica、WAONなど
決済:対象店舗によって利用可能

国際決済銀行(BIS)のリポートによると、

世界65カ国・地域のうち6割がCBDCの実験段階に進んでいます。

今後3年のうちにデジタル通貨の発行が始まる可能性がある

国・地域は、人口ベースでは世界の5分の1に及びます。

CBDCs research and pilots around the globe

【出典】Digital currencies and the future of the monetary system(Bank for International Settlements)
Basel 27 January 2021

各地域での発行状況

すでに発行済み、これから発行検討の順で見ていきます。

2020年発行済み

🇧🇸バハマ中央銀行
「サンド・ダラー」
2020年10月に発行された世界初のCBDC。700以上の島からなる国で、銀行の支店撤退などで金融サービスを受けられない住民に金融アクセスしやすくするのが狙い。バハマドルと1対1で連動し、当初は国内限定で利用可能。

🇰🇭カンボジア国立銀行
「バコン」
スマホアプリを使い、電話番号かQRコードで個人・企業間の送金や店舗への支払いをできるシステム。リエルと米ドルに対応。カンボジア国立銀行とブロックチェーン(分散型台帳)開発を手がける日本企業のソラミツが共同開発。

2021年以降に発行検討

🇪🇺欧州中央銀行(ECB)
「デジタル・ユーロ」
匿名性を担保するため「匿名バウチャー」を導入。利用者はデジタル・ユーロにバウチャーを付けて送れば、一定額まで当局に中身を見られずに送金可能。まずは21年半ばまでに発行是非を判断予定。

🇯🇵日本銀行
「デジタル円」
実験は3段階。まず発行や流通など通貨に必要な基本機能を検証。次に金利や保有金額に上限を設けるなど通貨に求められる機能の検証。最後に民間事業者や消費者参加型の実証実験。発行・流通には日銀法の改正が必要となる見込み。

🇨🇳中国人民銀行
「デジタル人民元」
中国人民銀行が金融機関を通じて発行。遅くとも22年の北京冬季オリンピックまでの発行目指す。広東省深圳市など5カ所で実証実験を開始。既に5万人弱が200元ずつ受け取り決済に利用した。

🇸🇪スウェーデン中央銀行
「eクローナ」

■東カリブ中央銀行
「Dキャッシュ」

🇹🇷トルコ中央銀行
「デジタル・リラ」

🇺🇦ウクライナ中央銀行
「eフリブナ」

🇲🇭マーシャル諸島共和国財務省
「マーシャルソブリン」

🇰🇷韓国銀行
「デジタル・ウォン」

🇱🇧レバノン中央銀行
「名称未定」

🇺🇾ウルグアイ中央銀行
「eペソ」

🇦🇺オーストラリア準備銀行
「RBAコイン」

🇹🇭タイ中央銀行
「名称未定」

🇸🇬シンガポール金融通貨庁
「デジタルSGD」

発行時期未定

🇨🇦カナダ中央銀行
「CADコイン」

【出典】日銀が実験スタート:よく分かる「デジタル通貨」(日経電子版)
2021年04月06日 公開

さいごに

日常生活で現金をほとんど使用しない先生からすると、

CBDCの導入が進むのは大歓迎なのですが、

すでに世界通貨を持つ米国・欧州・日本はかなり慎重です。

CBDCのメリット・デメリットは以下です。

メリット

・流通コストの低下につながる。
・流通量拡大のきっかけになる。
・金融政策のコントロールが効きやすくなる。

デメリット

・マネーロンダリングの温床になる。
・既存の銀行システムとの共存が未知数。

米ドル・ユーロ・円は、すでに世界中で流通されており、

既存の仕組みを壊してまで取り組むメリットより

デメリットが重くのしかかります。

<外国為替決済高の上位10通貨(2019年)>
1位 🇺🇸アメリカ・ドル 88.3%
2位 🇪🇺EU・ユーロ 32.3%
3位 🇯🇵日本・円 16.8%
4位 🇬🇧イギリス・ポンド 12.8%
5位 🇦🇺オーストラリア・ドル 6.8%
6位 🇨🇦カナダ・ドル 5.0%
7位 🇨🇭スイス・フラン 5.0%
8位 🇨🇳中国・人民元 4.3%
9位 🇭🇰香港・ドル 3.5%
10位 🇳🇿ニュージーランド・ドル 2.1%

【出典】Turnover of OTC foreign exchange instruments, by currency(Bank for International Settlements)

一方の新興国は、そもそも銀行システムが未整備な地域が多く、

CBDCの導入により、一足飛びで課題解決を行えるためメリットの方が多いわけです。

こうした違いから、実行の姿勢やスピードにも差が出ています。

結局はユーザー視点に立った議論にはなっていないわけですね。

デジタル人民元で一躍国際通貨の仲間入りを目指す中国が、

台風の目にもなりそうですが、果たしてどうなるでしょうか。

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では、ごきげんよう。

今日のまとめ

基軸通貨の変遷:
スペイン・ペソ→イギリス・ポンド→アメリカ・ドル→???

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