・借金は60代以上も抱えている
・住宅ローンの落とし穴
・型を早期に作ったもん勝ち
今日は「シニアの借金苦」というテーマでお届けします。
このブログの内容は動画でも解説しています。
こちら以前に「Abema Prime」という報道番組の中で「なぜシニアで借金苦に?返済への焦りと不安」というテーマで取り上げられていたんですよね。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2023年)によると「借金を抱えている人の割合」はこのようになっています。
20歳代 21.10%
30歳代 25.30%
40歳代 28.90%
50歳代 23.90%
60歳代 14.10%
70歳代 7.30%
ご覧のように40代前後の世代で借金を持っている割合が多くなっています。この借金には住宅ローンのほかにも、子どもの教育資金、旅行・レジャー、医療費、日常の生活資金なども含まれます。
60代は定年を迎える年であり収入が細りますから、本来であれば借金は完済していないといけないわけですが、70代を合わせると2割以上が抱えているという事実にぼくは驚きました。
日弁連「破産事件及び個人再生事件記録調査」(2020年)によると、多重債務者に対する破産事案の割合は
<破産をしている人の割合>
20歳代 9.92%
30歳代 15.89%
40歳代 26.94%
50歳代 21.45%
60歳代以上 25.72%
これも驚きですね。60代以上の破産は全体の1/4以上にのぼります。ここから見えることは、借金を持った状態で定年を迎え、そこからはパートやバイトで収入をつないでいくことになりますが、それ以前と比べると急激に収入は落ち込むでしょうから返済に窮するということです。
「Abema Prime」ではゲストとして、72歳で借金1,000万円を抱える自営業のマツさんという方が出演されてました。
「日々お尻に火がついているから仕事のことばっかり、それしか頭にないですよ」
30歳で独立されて、現在までパンフレット制作などの広告業を都内で営んでいるそうです。
・年金が月13万円
・賃貸暮らしで家賃月11万円
・貯蓄はゼロ
食費や電気代などを節約しながら一人暮らしでご家族なし。ぺいぱ自身は現在40代半ばですが、このまま独身で生涯を終える可能性が高いですから、この話は人ごとではありません。
マツさんは30歳で独立した当時から自転車操業だったそうです。従業員は最大3人いたそうですが現在はゼロ。趣味はカメラで昔は休日に楽しんでいたけど、いまはそんな時間もなく知人に貸しているのだとか。
若い時は「将来的には楽な暮らしができるんじゃないか」と思われていたそうですが、結果として72歳で借金1,000万円を背負いながらいまだに仕事に追われているわけです。
広告業は通常、自身の人件費や稼働にかかる備品や機材購入などで費用の持ち出しが先行し、そこで得られる収益は後から入ってくる形のビジネス形態になります。
マツさんは、その収入と支出のタイムラグを補うための運転資金をおよそ10年前、つまり60代の時に銀行から借り入れをし始めたそうです。
「老後をどうしようかとかは考えていないというか考えられない。この先時間がない。返済への焦りもあり心にゆとりがない」というコメントをされていました。
個人事業における苦難
広告業を営むマツさんが、72歳のいまなぜ1,000万円もの借金を背負うことになったのか、その理由についても述べられていて、
・広告業の事業自体が不安定であること
・大きな仕事を掴むチャンスが来ても逃してしまう
・努力不足、営業が足りない、新事業で成果が出ない
発注側の視点に立てば「大きな仕事を高齢者が1人でやっている会社に委託しずらい」というリスクヘッジの観点もあるでしょう。
ぼくもフリーランスとして1人で仕事を受けていた時代がありましたが、20代の時ですら下請けの下請けのまた下請け、という形でした。個人でやるというのはそういうことでもあります。
相手に安心してもらうという観点も大事ですから、一人でやっていると仕事の大きさに限界はあります。よほど長年の信頼関係がある、お付き合いが深い方とやる、同業間でのチーム体制が整っている、ということでもない限りはどうしても単価が低くなりがちです。
もう1つあるとすれば、紙媒体の仕事が中心で世の中のデジタル化についていけていないということもあります。
企業側が効果測定をしやくすく、若い人たちへのリーチも容易なWebADにシフトしている流れは10年・15年以上前からありました。
やはりビジネスをするにはお金が集まってる場所、市場が伸びている場所でやるというのが鉄則。魚のいないところで釣り針を垂らしても意味がないということです。
もちろん、この番組で出てきた情報は断片的でしょうし、マツさんがこうなられた要因も複合的ですから、ここで全ては語れませんが、こうしたシニアの借金苦はとても人ごとではないなと感じます。
この番組についていたコメントの一部を紹介しましょう。
・見栄とプライドを捨てるべき。自己破産して安いアパートに引っ越せば年金13万円で暮らしていける。
・マツさんの話は単なる儲からない職業をズルズル経営して借金があるだけ。
・計画性もなければ、支出の計算もできない経営者が続けられるわけない。
・印刷のお父さん、普通に自己破産して生活保護でいいんだよ。もう何か気にする年齢じゃないし。
・マツさんの例シニア関係ねーじゃん、借金の理由にも関係ないし、1000万なら誰でも苦しいわ。
・諦める勇気、辞める勇気って必要やなって。
・72歳まで健康的に働いていること自体がすごい。ただ、もはや自己破産したほうがいい気がする。
・こういう人でも生きていけるなんて、日本は平和ですね。
・もう私達の世代は死ぬまで働くんだろうな。
・マツさんはどんな繋がりでこれに出演することになったわけ?こういうのいつも不思議。
・返済はどうします?と聞かれて「本業を軌道にのせて…」って、、素直に無理ゲーです!って言えよって思う。
・経営者の事業資金を高齢者の借金問題として語るのはおかしいでしょ。
たしかにここにもある通り、シニアの借金苦の多くは今回のような事例ではないということには注意が必要です。これは個人事業がうまくいっていないケースでしたが、シニアの借金苦で多いのは住宅ローンだからです。
住宅ローンの呪縛
「住宅の購入当初は返済できる見通しだったが、高齢になるにつれて収入が減少して支払いが追いつかなくなるケースが多い」
これがシニアが借金で苦しむ理由を端的に説明したものです。
先ほど触れた破産している人の割合で、50代と比べ60代以上で増えているのはまさにこういうことですね。
住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」(2022年度)によると、融資区分別の平均年齢はこのようになっています。
注文住宅:46.2歳
土地付注文住宅:39.6歳
建売住宅:41.7歳
マンション:45.7歳
中古戸建:44.3歳
中古マンション:45.2歳
2021年度と2022年度を比較すると全ての融資区分において平均年齢が上昇しており、晩婚化、定年年齢の引き上げによって50歳以降に住宅ローンを組む方が増えた、収入が安定する40歳代で契約する方が多い、ということが結果に影響していると考えられます。
30代、40代までは収入もそれなりに維持・向上されているでしょうから、ローンを組んだ時点での返済プランと大きく乖離することはないんでしょうけども、転職をする、会社環境が変わる、景気が変わるなどの変数によって、収入が下がることは考え得るわけです。
そして建物も長く住めば住むほど修繕費は上がっていく。つまり時間の経過とともにコスト増にもなる資産が不動産です。
収入が下がる、支出は上がる。これを踏まえれば、先が苦しくなるのはある程度見通せます。でも人間というのは将来のことよりも目先のいまのことになってしまうから、借金苦に陥るのでしょう。
住宅ローンは返済できずに放っておくと、立ち退きや残債の一括返還などが起こり得ますから、人生設計が大きく揺らぎます。
国土交通省が発表した「令和4年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、住宅ローン融資を行っている金融機関の98.7%が、完済時年齢を審査時に重視しているという結果でした。
なお注文住宅の場合は、
借入時の平均年齢 39.5歳
完済時の平均年齢 72.3歳
となっているのが現状です。
「いやいや、定年から12年も過ぎてますけど!」とツッコミたくなります。ちゃんと払える算段はついているんですか?と。
35年ローンって使いやすいとは思います。日本も金利のある時代に突入したものの、それでも変動金利で0.5%前後。月々の返済額に直すと、収入がそれなりの人でも気軽に家が買える気になってしまいます。
ただ、あくまで分割で返済する借金です。支払いの苦労を先延ばしにしているだけ。これが途中で躓いて自己破産でもすることになれば、ブラックリストにも名前が載り、しばらくの間クレジットカードも作れず、無論新規でローンも組めません。
ぼくは普段、クレカ支払いやiD決済が中心ですから、このキャッシュレス時代において生活にも支障が出そうです。変動金利も上昇の兆しがあり、そしてペアローン地獄みたいな言葉もよく目にするようになりました。
とは言っても、この「やわらか中学校」は30代中盤から40代の方が多く見られていますが、そうした方々が20年後、30年後をイメージするのもなかなか難しい側面があります。
でもだからこそしっかり考えておく。なんとなく頭の中だけでイメージを膨らませるだけではなく、具体的な数字に落としておく。
Excelでもなんでもいいですが、今から1年後・5年後・10年後にどのような収入・支出になるか、ローン残高はどのぐらいになるか。これと向き合うことが大事です。
日本FP協会では、自身のライフプランをより具体的にイメージするため、ワークシート型ツールで家計の現状を整理、把握するためのシートが用意されていますので、これらを用いると良いでしょう。
おしらせ
キャラクター”ぺいぱ”がデザインされた「資産運用学園やわらか中学校」公式アイテムがついに販売開始!トイレットペーパーを模したキャラデザの由来は、古くなったお札が再利用されてトイレットペーパーになることや、ウン(運)がつく縁起ものだからなど、諸説あり。いずれのアイテムも日常使いできるシンプルデザインです!ぜひお買い求めください!
さいごに
今回は「シニアの借金苦」をテーマに話をしてきましたがいかがだったでしょうか?
「やわらか中学校」を見ていただけている方はお金に対して意識の高い方が多いですから、定年を迎える前にこうした準備を当たり前のようにされているケースが多いかと思います。
今回取り上げたように70歳を超えて借金を抱えているなんて状態はできるだけ避けたい。だからこそ、頭が働くいまのうちからしっかりシミュレーションをしておく、お金が育つような仕組みを作っておく。
それは先取り貯金・積立投資をしておくとか、ポイントも無駄なく残らず利用・運用して使い倒すなどです。
結婚をするとパートナーとの意見調整が必要になりますから、まずは独身のうちにこうした自分の型をしっかりと固めておくことが大事になります。
独身をこじらせているぺいぱとしては最後の希望の星、俳優の天海祐希さんが2021年の主演映画「老後の資金がありません!」の公開に先だったインタビューにて、家族の暮らしに憧れを抱くことはないのかを聞かれたシーンでこんなことを語っています。
「うーん。もちろん、家族の幸せってすごく大切だと思う。でも私は、一人で本当に良かった。申しわけないけど、心の底からそう思ってるから(笑)。だって、自分だけが気を付ければいいんですよ。家族がいる方は大変だと思う。夫、子ども、親のことを考えて、気を回して……。そんな愛情豊かな生き方は、私にはできないと思うんです。自分のことで精一杯で、気を遣えないんですよね。だから、誰かと一緒にいるよりは、一人がいい。たぶんペットも飼いません。責任が持てないから」
なるほど、深い。この話には続きがあります。
「50代に入ったら、すごく楽になりましたね。だって、20代から40代って、選択肢がまだまだたくさんあるじゃないですか、例えば子どもを産むとか。50代になると、物理的にも無理なことが増えてきて、選択肢がどんどんなくなっていくから、もうあるものから選べばいいわけ。若いと、『こんな可能性もあるんじゃないか、いや、やっぱりこっちかな……』とか、迷うことが大変だったりする。今はもう、めちゃめちゃ気楽ですね。家族にも誰にも振り回されることなく、自分が大好きな仕事を、思う存分できる。毎日、楽しくて仕方がない」
前回「40代男性は何のために生きているのか」という話をしましたが、年齢を重ねていくと人生の終わりが見えてくるからこそ気持ちが行き詰まるようなことがあるのでしょう。
しかし、そんな中でも逆に選択肢が絞られてくるから迷うことなく生きていけると捉える人もいる。いやはや、何事もどのように受け取るかというのは大事だなと。
たしかにぼくも、人のことなんか考えてられない。自分だけでなく両親の将来だって考えていく必要があるのに、そこに加えて別の誰かのことを心配するなんて難易度が高すぎる。本当そう思います。ま、だからますます婚期は遠のくんでしょうけども(笑)
話を戻しまして、お金に関する意思決定で揉めるのが一番大変。なので独身のうちに自分のお金のことについては考え方も含めて全てケリをつけておく。これはいま20代だろうが、30代だろうが、40代だろうが同じです。
そういう行動こそがシニアで借金苦にならないために必要なことなのだろうと思います。
皆さんはどのような感想をお持ちでしょうか?いま取り組んでいること、うまくいったこと、ヘマをしたことなど、色々なご意見ご感想をお待ちしています!
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
お金の苦労は知恵で解決できる