ごきげんよう、ぺいぱです。
このブログの内容は動画でも解説しています。
タイトルにもある通り、今回は「そのFIRE、本当にFIREですか?」というこの問いを分解していきます。
近年、雑誌やYouTube、書籍などで「FIRE(経済的自立した早期退職)」という言葉を頻繁に目にします。いまやすっかり市民権を得たワードとなりましたが、言葉はコミュニケーションのためのツール。相手との意思疎通のため、どんな意味かハッキリしている必要があるわけです。
「早期退職」「アーリーリタイア」「脱サラ」など、類似の言葉はこれまでもありました。ただし会社員収入に代わるものをその後どう用意するのかは千差万別であり、これらと「FIRE」が決定的に違ったのが、
・自らはもう働かない
・資産収入だけで生活をしていく
この点にあったのだとぼくは理解しています。取り崩す資産は4%を目安にする、というのはいまではすっかり有名になりました。
概要:
米国株式と米国債を組み合わせたポートフォリオの過去データをもとに、インフレを加味して検証された取り崩し指針。FIREに向けた必要資産額の算出によく用いられる。
計算式:
年取り崩し額 = 資産総額 × 4%
事例:
リタイア時に1億円の資産を持っている場合、「1億円 × 4% = 400万円」となり、年間400万円を取り崩して生活することが可能。この範囲であれば資産が高い確率で枯渇することなく長期にわたって生活を支えることができるとされる。年間生活費の25倍という計算でも良い。
なのにとりあえずなんでもかんでも「FIRE」と付けておけば注目が集まる。書店に平置きされる本でもそうでしょうし、YouTubeのサムネでもそうだし。ま、例に漏れずぼくも使ってますし(笑)
そんなこともあり近年は「FIRE」の定義が広がりすぎて、もはや何だかよく分からない状態になっていませんか、というのが今回のテーマです。発信側の意図と、情報の受け手との前提が違いすぎると、せっかくの情報も役に立たなくなってしまいます。
もちろん、FIREを名乗る側、つまり情報発信する側は、自分が納得しての言い回しなのであればそれは自由に使えば良いと思います。若干定義と外れていると認識していようが、そうじゃなかろうが、どう思っていても個人の自由だからです。
ただ、それが受け手の視点に立つと話が変わってくる。「FIRE」は現代において憧れの生き方の1つとされます。労働で奪われる時間を自分の手に取り戻す。資本主義社会に生きているからこそ叶えられる選択肢。なので人は「自分が何をすれば良いか」「どういうマインドであれば良いか」などのヒントを得るために、FIRE民の発信している情報をチェックするわけです。
そこで、もし情報の受け手が考えるFIREと、発信側のFIREの前提に大きなズレがあり、それに気づかず、勤務先を辞めてFIREをしたらどうなるでしょうか。
「イメージしていた生活と全く違うな…」
「手持ちの運用資金じゃぜんぜん生活費足りない…」
こんなことになり、結果的にしばらくして会社員に戻る。つまりは「FIRE卒業」なんてことも起こり得ます。
仕舞いにはそういう人を祭り上げて、
・こんな生き方がまかり通るはずがない。
・こんな生き方が楽しいはずがない。
・こんな生き方はなまけものだ。
みたいに、多様な生き方を尊重しないどころか、よくFIREを理解もしていない、相手の立場に立ってものを考えることもできないメディアや芸能人などに見下されたり嘲笑されたりする。FIREは手段であるはずなのに、ゴールかのような報じられ方をする。
そしてそんな情報が広まると、 ますますFIREという生き方が歪曲して伝わり、目指すのを辞めてしまう人だって出てくるかもしれません。
そんなぺいぱも、FIRE民を名乗っているわけですが、長らくこの番組にお付き合いいただいている方はご承知の通り、計画的にFIRE生活を迎えたわけではありません。会社員時代末期に体調を崩してなし崩し的にそうなっただけなので、FIRE自体に何か特別で崇高なイメージを持っているわけではありません。
FIREはいいぞ、みたいな情報発信よりは、突然無職になって手探りになった生活に右往左往している話題を扱うことの方が多いと思いますし、FIREに過度の憧れや誤解を生まないように、気をつけているつもりでもあります。
話を入り口に戻していきますが、世の中に溢れる「FIRE」は単語だけが先行しすぎて、情報の受け手が誤解をしてしまうことがあるのではないか。今回は、広義すぎるFIRE情報の中で、受け手はどこを注意して情報を拾うべきか。これについて語っていきたいと思います。
形骸化しているFIREの現状
本来のFIREムーブメントは、資産の運用益だけで生活し、自身は好きなことに時間を充てる。こんな意味や意義がありました。以前にこちらの回「みんなのFIRE辞典:これが増殖し続けるFIREの今だ!」でも取り上げたように、現在ではこのように多様なパターンが存在します。
もちろん、冒頭で触れた通り派生FIREは定義がハッキリしない単語群ですから、皆さんがイメージしている内容とは違っているかもしれませんので、だいたいで聞いていただければ幸いです。
<(A) 会社は早期退職/資産収入のみで生活できるタイプ>
・Fat FIRE【ファット・ファイア】
会社は早期退職。資産収入のみで十分豊かな生活ができるが多くの資産が必要。
・Lean FIRE【リーン・ファイア】
会社は早期退職。資産収入のみで生活できるが倹約努力は必要。
………
<(B) 会社は早期退職/資産収入のみで生活できないタイプ>
・Side FIRE【サイド・ファイア】
会社は早期退職。資産収入のみでは生活できず、不足分は個人での労働収入で補う。
………
<(C) 会社に所属/資産収入のみで生活できるタイプ>
・FIRO【ファイロ】
資産収入のみで生活できるが会社に所属している。いつでも早期退職することが可能。
………
<(D) 会社に所属/資産収入のみで生活できないタイプ>
・Barista FIRE【バリスタ・ファイア】
資産収入のみでは生活できないため、不足分を会社に所属してその労働収入で補う。
・Coast FIRE【コースト・ファイア】
資産収入のみでは生活できないため会社に所属しているが、定年後の生活資金は貯め終えた状態。
〇〇FIREではないものも一部含まれていますが、こうやってみますと、もはや「経済的自立(FI)」でも「早期退職(RE)」でもないものまで比較的広い範囲で「FIRE」と呼ばれています。
特に派生FIREで最もよく耳にするサイドFIRE。本来は、生きていくために必要なお金である生活費と、そうではない娯楽費とを分けて考え、前者は資産収入で賄える状態。後者を必要に応じ仕事して稼ぐ。そんな存在だったかと記憶しています。
しかし、現在はその区分も曖昧になっており、「フルFIREする資産はないけど、会社員は辞め、足りない分はゆるく仕事をして何とかする」というざっくりした使われ方になっている印象があります。
さらには、社会との関わりを持つために、食べるための労働ではなく、趣味としての労働をしていくという考え方も根付いてきた印象がありますね。
さて、いろいろな派生が登場し、その意味すらも変質していくFIRE。これにはいくつかの背景があると考えられます。
一つは冒頭でも触れたマーケティング的な側面。
<マーケティング的な側面>
かつて使われていた「セミリタイア」や「脱サラ」という言葉よりも、「FIRE」と表現する方が新鮮で、キラキラとした憧れを抱かせやすく、情報の魅力や鮮度を保つのに都合が良い。
もう一つは、現代人の労働に対する向き合い方の変化。
<労働に対する向き合い方の変化>
完全に仕事を辞めるのはハードルが高いけれど、今の辛い働き方からは一刻も早く抜け出したい。そんな人たちにとって、不足分を労働で補う形態であっても「FIRE」という看板を掲げることは、精神的な救済や過酷な現実を和らげるオアシスのような役割を果たしている側面がある。
結果としてFIREは、本来の定義からは大きく離れ、自由な生き方を総称する「称号」としての言葉に置き換わっていった、というのが実態ではないでしょうか。
情報を受け取る際に気をつけること
ネットやSNSに溢れる「FIRE達成」の報告を自身に当てはめる際、最も注意深く見極めるべきは、発信者の属性という変数です。ここを無視して手法だけを真似ても、再現性は得られない可能性があります。特に注視すべきポイントはこのあたりでしょうか。
・独身か既婚(パートナー・子供)か
・資産が世帯単位か個人単位か
・パートナーが会社員かどうか
中でも「子供」という変数は、ライフプランの難易度を劇的に変える最大の要素でしょう。自分一人であれば、不況時には「食費を削る」「住居をダウンサイジングする」といった支出のコントロールがいくらでも効きます。しかし、子供の教育費や医療費、健やかな成長のための環境維持に「妥協」という選択肢は存在しません。自分への締め付けはできても、家族への締め付けには限界があるからです。既婚で子ありというのはFIREをする際、最も難易度が高いと考えられます。
また、意外と見落とされがちなのが「パートナーの存在」。パートナーが会社員を継続している状態でのFIREは、家計全体で見ると実質的にかなり強いリスクヘッジが効いている状態です。毎月の安定した給与収入があるだけでなく、条件を満たせば健康保険の扶養に入ることもでき、社会保険面での負担も軽くなります。独身で、すべてを自分の資産収入と国民健康保険・国民年金で賄うケースとは、背負っているリスクの重みが根本から異なります。
FIRE生活は支出をどうコントロールしていくかが最大のポイントと言っても良いでしょう。そうした点で、資産収入は労働収入ほど安定しませんし、日常生活での充足感や幸福感のあり方は、人によってどの程度の支出でOKなのかがまったく異なることも見過ごせません。
これだけ多くの変数が存在しますから、特定のFIRE民1人だけが学び先になることはほぼないでしょう。「これは自分に適用できそうだな」という手法やマインドを、いろいろなFIRE民たちから取捨選択して自分なりの形を築き上げていく、いわゆるビュッフェスタイルが理想。
そして「誰が、どのような前提条件のもとに語っているのか」。その情報の裏側にある背景を正しく分解して理解することが、自分らしいFIREへの一歩となるのではないでしょうか。
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FIRE民ぺいぱの背景情報
さて、そんなぺいぱも2025年から無職になりFIRE民を語っていますから、全体像を改めてお伝えしておきましょう。数字については四捨五入しています。一部概算値も含みます。
<ステータス>
・男性
・独身
・40代後半
・都内在住
・元IT企業勤務会社員
・2024年末で退職
<会社員遍歴>
・2000年〜02年:ベンチャー企業(デザイナー)/20代前半
・2003年〜05年:IT企業(デザイナー)/20代後半
・2005年〜24年:IT企業(いろいろ)/20代後半〜40代中盤
<引っ越し遍歴>
・実家を出て初めての一人暮らし(2000年4月〜)
・持ち家のマンション暮らし(2010年5月〜)
・持ち家を出てホテル暮らし(2021年3月〜)
・ホテルからオフィス近くの賃貸(2023年2月〜)
・オフィス近くから持ち家近所の賃貸(2025年8月〜)
<会社員年収推移>
2017年:1,121万円
2018年:1,229万円
2019年:1,313万円
2020年:1,386万円
2021年:1,427万円
2022年:1,431万円
2023年:1,285万円
2024年:1,350万円
<貯蓄率推移>
2017年:27.39%
2018年:41.48%
2019年:7.36%
2020年:59.98%
2021年:60.57%
2022年:44.21%
2023年:23.69%
2024年:34.01%
<運用利回り>
2017年:+13.51%
2018年:▲10.88%
2019年:+30.08%
2020年:+30.20%
2021年:+9.84%
2022年:+1.99%
2023年:+27.80%
2024年:+33.40%
<アセットアロケーション>
オルカン:44.38%
不動産 :42.22%
暗号資産:10.79%
法定通貨:2.61%
※26年2月末時点
<純資産推移>
2017年末:2,002万円
2018年末:2,026万円
2019年末:2,649万円
2020年末:3,829万円
2021年末:4,918万円
2022年末:5,516万円
2023年末:7,314万円
2024年末:1億183万円
ご覧のように、ぺいぱは会社員での稼ぎがそれなりにありましたので、支出管理を始め貯蓄率を高めた2020年以降、資産の増加ペースが大きくなっています。2021年6月にコア資産をオルカンへ一本化するまでは、海外ハイパーグロース個別株でポートフォリオを組んでおり、コロナショック後の金融緩和相場に大きく乗ったことも大きかったですね。
2017年以前の数字がないのは、手元に情報がないためです(笑) Excelで管理し始めた最初期が、2017年末なんですね。当時は世の中が、東芝の債務超過問題に揺れていた時期で、「あんな大企業がそんな事態になるのは怖いな…」と心底思ったものです。なのでこの時期から自身でもP/L(損益計算書)とB/S(貸借対照表)をつけることにしました。
2004年〜2007年にやっていた日本株のデイトレで100万円の損失を出して以来、実に10年ぶりに株式投資に復帰。資産形成をしていくという概念は特段持っていませんでしたが、外国個別株を保有したのはこの時期です。よく使っているサービスは今後もなくなることはないだろうということで、最初にアルファベット株を購入したのは今となっては懐かしい思い出。
なお、2017年末の純資産がすでに2,000万円台に乗っかっていますが、何か特別なことをしていたわけではありません。2014年は貯蓄率ゼロで、この前後の時期が一番浪費していたとも言えますが、もともと趣味は多くなく、お金の使い道もゲームとジムと交際費ぐらいでした。なので意識せずとも少しずつ増えていったんですね。あと、自分が積み上げてきた資産に相続・贈与等もありません。さらに付け加えると、翌月の2018年1月は暗号資産市場の大暴落が発生して400万円ほどがあっという間に無くなっており、こちらも今となっては懐かしい思い出。
早期退職後の2025年からの収入は、所有不動産からの家賃収入が月12万円と、YouTube・ブログからの広告収入が月1万円ほど。後者は労働集約型の収入と言えるのかもしれませんが、どちらかというと趣味で続けているものです。あとは、必要に応じて資産を取り崩して生活をしています。こうした背景を踏まえて、発信している情報を見ていただくと、より解像度が高まるのではないでしょうか。
あと、「年収が高ければ資産が増えるのは当たり前だ」というような声が必ず出てくるので、最後に付け加えておきます。
年収が1,000万円だろうが5,000万円だろうが、支出が同じだけあれば資産は増えません。収入が上がると支出も気づかないうちに上がっていく。これ、人間のサガなのかもしれませんが、ここで生活水準を上げず襟を正した生活をし続けていくことって、簡単そうでなかなか難しかったりします。
そして、稼ぎ方は人それぞれで、それは本業で稼ぎを増やすこともあれば副業で増やすこともあるでしょう。それが自身と乖離していることを理由に、すべてを役に立たない情報だと切り捨ててしまうのは少々勿体無いとぼくは思います。部分的には活かせる内容があるのではないかと思うからです。
例えばYouTubeで大成功を収めているお金系の情報発信者に対しても「YouTubeの収益があるからだろ」という声はなくなることがありません。言わんとしていることはわかるのですが、資産は「稼いで、貯めて、育てる」が基本構造。支出管理のあり方にいろいろな種類があるように、稼ぎ方にもいろいろな方法があります。
稼ぎ方は、貯め方と比べて再現性の面で言えば即効性はないし、ハードルは高いでしょう。節約は今から実践すればその日に効果が出ますが、稼ぐことが軌道に乗るのは年単位での継続が必要だからです。それで諦めてしまうか、地道に続けられるか。そこが資産形成の勝負を分けるという理解を正しくしていくことも、FIREに向けてはとても重要な一歩になるのではないでしょうか。
さいごに
今回は「そのFIRE、本当にFIREですか?」をテーマに話を進めてきましたがいかがだったでしょうか。
いまやマジックワードとなった「FIRE」という単語に踊らされず、その裏にある前提条件を分解して理解することが大切。自分と境遇が近い人の情報は共感しやすく参考になりますが、属性が大きく違う場合はどれだけ行動を真似ても自分には合わない、すぐに上手くいかないことにもなり得る。そんな話をさせていただきました。
もちろん、FIRE民の情報すべてを勉強のために見るということでなく、1つの「エンタメ」として割り切って楽しむのも手です。FIREは生き方の手段の1つでしかありません。大衆とは違う生き方を模索している人々の日々の行動や葛藤は、下手なテレビドラマよりも魅力的で面白い。ぼくも多くのFIRE民の発信を楽しんで視聴している理由となっています。
皆さんはFIREという単語の定義の広がりについてどう思われていますか? またFIRE情報と接する際に気をつけていることは何かありますか? ぜひコメント欄で教えてください!
この「やわらか中学校」では、ぺいぱの資産運用の実体験を中心にお金や仕事に関する話題をお届けしています。ぜひチャンネル登録・いいね・コメントをよろしくお願いいたします!
また、YouTubeサブチャンネル「ぺいぱのひとりごと」は、ぺいぱが興味関心のある話題を取り上げて好き放題喋り倒すラジオのような配信番組となっています。
そしてこの「やわらか中学校」から生まれた4コママンガ「やわらかクエスト -お金と仕事と呪われし大陸-」をnoteで連載中。中世RPG風の世界観でお金や仕事に関するあるあるネタを扱った作品となっていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
「FIRE」の包み紙に惑わされず、その中身を冷静に確認しよう。

