・『秀丸エディタ』との出会い
・開発者の斉藤さん
・バージョンアップの真理
ぼくが社会人になった2000年。
最初の会社はベンチャー企業でした。
モバイルコンテンツに関する市場調査やポータルサイト、
アプリ開発やイベントなどを幅広くやる会社です。
デザイナーとして入社しましたので、主にはアドビ系の
アプリケーションを使用することが多かったのですが、
テキストエディタについては、先輩に勧められた
『秀丸(ひでまる)エディタ』というものを使っていました。
個人の方が開発されたシェアウェアで、初期利用は無料。
継続使用時にはソフトウェアキーを購入するというものです。
それ以来、Windowsを使用する際、テキストエディタは
必ず『秀丸エディタ』を使っていました。
使いやすいツールだったというのもさることながら、
人間は親しんだツールから他には移りづらい。
一時的だとしても、乗り換えに伴う修練コスト(手間や時間)で足を引っ張られたくない。
こんな気持ちがそうさせるのだと思います。
なぜ『秀丸エディタ』の話を急にし始めたのかというと、
開発者の斉藤秀夫(さいとう・ひでお)さんへのインタビュー記事を目にしたからです。
【出典】「惰性でやっている」「ビジョンはない」 30年続くソフトウェア稼業「秀丸」がいまも最前線に立ち続ける理由(CORAL)
2022-05-11
実は『秀丸エディタ』は昨年も1度話題に上った時がありました。
2021年11月に、なんと11年ぶりのメジャーアップデートがあったためです。
パソコンのアプリケーションは数年に一度、大きなアップデートがあるような世界ですから、
これだけ期間が空くのはかなり珍しいことなんですね。
記事では、メジャーアップデートの背景について話がされているのですが、
これが実に興味深い。
一部、紹介します。
■11年ぶりメジャーバージョンアップの意外な裏側
ーー昨年、秀丸が11年ぶりのメジャーバージョンアップと報じられました。ver9.00となったわけですが、その背景について教えてもらってもいいでしょうか?
斉藤さん:これまで小さなアップデートをしたときはバージョン番号を0.01ずつ上げて、大きな機能を追加したときは0.1ずつ上げていたんです。
ただ、そうしていたら、ついにver8.99までいってしまいました。
話がそれてしまうんですけれども、秀丸エディタには公式マニュアルというものがあって、表紙に「ver8対応」と大きく書いてあるんです。社内にその在庫がたくさんあるので、正直、ver9.00にはしたくなかったんです。
ここ数年は秀丸エディタの担当に、「そういう事情があるからなるべく9には上げないでくれ」とお願いしていたんですけど、バグが出てしまったりして、細かい修正をどんどんしていたら、8.99まできてしまった。
「もうマニュアルも全部廃棄かな」と思ったんですけれど、やっぱり捨ててしまうのももったいないので、マニュアルの購入ページに「ver8対応とありますが、ソフトの内容はそんなに変わっていませんから大丈夫ですよ」みたいなことを書いて継続販売をしています。
なんとも驚きの理由でした(笑)
でも、これを見て思うことがあります。
本来はこちらの方が正しい考え方なのかも、ということです。
「アプリケーション」の進化は、「人」の成長にも置き換えることができるように思います。
コツコツと何かを学び、成長をしていくと、人としての経験値が上がっていく。
あるタイミングを超えると、積み上げた力で、大きな成果や実績を出す。
こうした現実があるわけですが、それは『秀丸エディタ』のバージョン番号の付け方とも合致します。
テレビゲームの主人公のように、一定の経験値を得てレベルアップすると、
一気に能力が上がったり、こつ然と魔法を覚えたりなんか現実ではないわけです。
パソコンのアプリケーションやOSにある「メジャーアップデート」なんていう見せ方は、
もはや売り手のマーケティング戦略の一手でしかありません。
地道に一歩一歩、前へ進んでいった軌跡、それがバージョン番号であり、人生の歩みそのもの。
記事にある『秀丸エディタ』や、制作者である斉藤さんの、欲のない姿勢を見て、
改めて色々なことに普段からがっついて、突然変異的な成果や成長を内心求めている自分に少し反省をしました。
では、ごきげんよう。
よろしければこちらの記事もご覧ください。
『秀丸エディタ』は誕生からもうすぐ30年。