・アップルさんの30年前
・世界時価総額ランキング30年間の変遷
・10年後に向けた注目ポイント
おはーん、ペーパー先生です。
米IT大手アップルさんが2018年に民間企業として世界で初めて時価総額が1兆ドルを突破してから2年後。
2020年8月には米企業で初めて2兆ドルを超えました。わずか2年で倍増したわけです。
このブログの内容はこちらの動画でも解説しています。
そんなアップルさんのおよそ30年前、1989年はパソコンの「Macintosh」シリーズが主力商品。
同年9月に発売されたポータブルコンピュータ『Macintosh Portable』がデビュー。
初のバッテリー駆動の『Mac』として事前の評価はかなり高かったものの、
ポータブルとは名ばかり、あまりの重さからニークラッシャー(膝を潰すの意味)というあだ名までつき、
かつ100万円ほどの価格と性能が見合わず、販売は低迷。
同社としては、クリスマス・シーズンで初めて売上高の減少を記録し、
株価も大きくクラッシュ。そんな年でした。
なお、1997年に創業者のジョブズ氏が復帰するまで低迷が続いていくことになります。
さて、思い出話はここまでにして、
時価総額というのはその時代の鏡とも言えますね。
現代はまさにアップルさんによるスマートフォン革新の真っただ中にあるわけです。
今日は、世界の時価総額ランキングをやわらか振り返りします。
世界時価総額ランキング30年間の変遷
まずは、日本のバブル景気真っただ中の1989年。
冒頭に紹介した『Macintosh Portable』発売のひと月前のランキングです。
<1989年8月>
1位 🇺🇸フィリップモリス(1,888億ドル)
2位 🇯🇵日本電信電話(1,638億ドル)
3位 🇺🇸ゼネラル・エレクトリック(1,127億ドル)
4位 🇳🇱ロイヤル・ダッチ(999億ドル)
5位 🇯🇵日本興業銀行(843億ドル)
6位 🇯🇵住友銀行(764億ドル)
7位 🇯🇵三菱銀行(726億ドル)
8位 🇯🇵第一勧業銀行(705億ドル)
9位 🇯🇵富士銀行(702億ドル)
10位 🇺🇸IBM(685億ドル)
<1989年トピックス>
01月07日:🇯🇵昭和天皇が崩御し、翌8日から元号「平成」が始まる。
01月20日:🇺🇸ジョージ・H・W・ブッシュ氏が、第41代アメリカ合衆国大統領に就任。
04月21日:🇯🇵任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」が世界に先駆けて日本で発売。
06月04日:🇨🇳北京で天安門事件が起きる。
08月14日:🇺🇸セガ・エンタープライゼスが「ジェネシス(メガドライブ)」を北米で発売。
10月31日:🇺🇸三菱地所がアメリカのロックフェラー・センターを買収。
11月10日:🇩🇪ベルリンの壁崩壊。
12月03日:🇺🇸米ソ首脳によるマルタ会談で冷戦の終結を宣言。
12月29日:🇯🇵日経平均株価が史上最高値の38,957円44銭(同日終値38,915円87銭)を記録。
フィリップモリスさんは世界最大のたばこメーカーで、現在もS&P500構成企業です。
なお、米企業債務超過ランキングも堂々の第1位だそうです。
そして10社中6社が日本企業という、今では信じられない光景。
NTTさんを除くとあとはすべて銀行ということで、半沢次長も
この時期に産業中央銀行へ入行したわけですね。
ちなみに、
・5位「日本興業銀行」+8位「第一勧業銀行」+9位「富士銀行」=みずほ銀行
・6位「住友銀行」+(「三井銀行」+「太陽神戸銀行」)=三井住友銀行
・7位(「三菱銀行」+「東京銀行」)+(「三和銀行」+「東海銀行」)=三菱UFJ銀行
今はこうなっています。
「ドラゴンクエストモンスターズ」の配合並みに難しいです。
<2001年12月>
1位 🇺🇸ゼネラル・エレクトリック(4,255億ドル)
2位 🇺🇸ジョンソン・エンド・ジョンソン(3,591億ドル)
3位 🇺🇸マイクロソフト(3,568億ドル)
4位 🇺🇸フィリップモリス(2,998億ドル)
5位 🇳🇱ロイヤル・ダッチ(2,819億ドル)
6位 🇺🇸エクソンモービル(2,688億ドル)
7位 🇺🇸シティグループ(2,597億ドル)
8位 🇺🇸ウォルマート(2,565億ドル)
9位 🇺🇸ファイザー(2,505億ドル)
10位 🇺🇸インテル(2,110億ドル)
<2001年トピックス>
01月01日:🌏21世紀が始まる。
01月20日:🇺🇸ジョージ・W・ブッシュ氏が第43代アメリカ合衆国大統領に就任。
04月26日:🇯🇵小泉純一郎が日本の第87代内閣総理大臣に就任。
09月11日:🇺🇸同時多発テロ事件が発生し、世界中に緊張が走る。
09月04日:🇯🇵東京ディズニーシーが日本の千葉県にグランドオープン。
10月23日:🇺🇸アップルがデジタルオーディオプレーヤー『iPod』を発表。
89年に1位だったフィリップモリスさんの時価総額を、上位10社がすべて上回りました。
1位は発明家トーマス・エジソン氏の会社を源流とするゼネラル・エレクトリックさん。
1981年にジャック・ウェルチ氏がCEOに就任。
「世界で1位か2位になれない事業からは撤退する」などのGE改革を断行し、
2001年に退任するまで大きな成果を上げたことから、20世紀最高の経営者と呼ばれています。
そのほかでは、ITセクターで強力な2トップとして市場をけん引していた「ウィンテル」の
マイクロソフトさんとインテルさんのランクインが
『Windws 95』以降に訪れたパソコンの時代を象徴しています。
その裏で、将来の『iPhone』に向けた布石としてアップルさんが『iPod』を投入。
『Mac』以外の商品ラインナップ拡充を開始したことも興味深いですね。
<2011年12月>
1位 🇺🇸エクソンモービル(4,062億ドル)
2位 🇺🇸アップル(3,764億ドル)
3位 🇨🇳ペトロチャイナ(2,768億ドル)
4位 🇳🇱ロイヤル・ダッチ・シェル(2,366億ドル)
5位 🇨🇳中国工商銀行(2,282億ドル)
6位 🇺🇸マイクロソフト(2,183億ドル)
7位 🇺🇸IBM(2,167億ドル)
8位 🇺🇸シェブロン(2,118億ドル)
9位 🇺🇸グーグル(2,088億ドル)
10位 🇺🇸ウォルマート(2,046億ドル)
<2011年トピックス>
3月11日:🇯🇵東日本大震災が発生する。
6月16日:🌏世界各地で皆既月食が起こる。
7月21日:🇺🇸アトランティスが最終飛行を終え、スペースシャトルが全機退役。
7月24日:🇯🇵地上デジタルテレビ放送へ全面移行。
10月5日:🇺🇸スティーブ・ジョブズ氏がパロアルトの自宅で死去。
12月12日:🇪🇺欧州合同原子核研究機構(CERN)がヒッグス粒子発見の可能性が高まったことを発表。
お気付きの通り、2001年から2011年の10年間、
上位企業の顔ぶれは変化があるものの、時価総額の規模はほとんど変わっていません。
2008年に発生したリーマンショックを発端とする金融危機で
世界経済が大きく冷え込んでいたことが理由の一つです。
2004年以降上昇を続けた原油高の追い風を背景に
石油企業の好調さが目立つ年と言えます。
その後、シェールオイルの採掘技術向上が見え始めた2013年以降、
下落に転じ、GAFAMに代表されるIT企業の時代へと移っていきます。
<2021年1月>
1位 🇺🇸アップル(22,153億ドル)
2位 🇸🇦サウジアラムコ(18,529億ドル)
3位 🇺🇸マイクロソフト(17,494億ドル)
4位 🇺🇸アマゾン・ドット・コム(16,087億ドル)
5位 🇺🇸アルファベット(12,388億ドル)
6位 🇨🇳テンセント(8,432億ドル)
7位 🇺🇸テスラ(7,521億ドル)
8位 🇺🇸フェイスブック(7,356億ドル)
9位 🇨🇳アリババグループ(6,889億ドル)
10位 🇹🇼TSMC(5,472億ドル)
<2021年トピックス>
01月06日:🇺🇸ドナルド・トランプ氏の支持者らがアメリカ合衆国議会議事堂を襲撃。
01月06日:🇭🇰香港警察が国家安全維持法に基づいて50人以上の民主活動家を逮捕。
01月07日:🇺🇸テスラのイーロン・マスクCEOがアマゾンのジェフ・ベゾスCEOを抜いて世界一の富豪の座に就く。
01月08日:🇺🇸ツイッターがドナルド・トランプ氏のアカウントを永久に停止すると発表。
01月20日:🇺🇸民主党のジョー・バイデン氏が第46代アメリカ合衆国大統領に就任。
01月27日:🌏ジョンズ・ホプキンズ大学の集計で新型コロナウイルス感染者が世界全体で1億人を超える。
02月01日:🇲🇲ミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握。
02月13日:🇯🇵東日本大震災の余震とみられる福島県沖と震源とする震度6強の地震が発生。
冒頭でも触れたとおり、1位はアップルさん。
続く2位のサウジアラムコさんはサウジアラビアの国営石油会社で、
2019年12月11日にサウジ国内の証券取引所タダウルで株式を上場しました。
上場時の時価総額は約1兆8770億ドルで一時2兆ドルを超えましたが、
現在は上場時水準となっています。
サウジアラビア政府が98.5%の株を握っており、海外投資家の参加が限られるほか、
脱炭素社会の流れの中で原油安の流れが続いており、苦しい状況が続きます。
2011年から2021年の間は、米国および中国のハイテク大手の顔ぶれが並び、
まるでアベンジャーズの様相に。
また、台湾のTSMCさんの成長も光りますね。
1987年、米テキサス・インスツルメンツ上級副社長だった張忠謀(モリス・チャン)氏が台湾で創業した同社は、
今や世界最大の半導体ファウンドリー(受託製造)企業です。
取引先はクアルコムさん、AMDさん、NVIDIAさん、アップルさんなど
製造ラインを持たない企業(ファブレス)がほとんどです。
このほか、テスラさんと自律走行車プラットフォームの共同開発をすることや、
米国アリゾナ州に新工場を建設する計画を発表するなど、
地政学リスクも抱える中で、米国との取り組みを加速させています。
【出典】データで見る日経平均 30年半ぶり3万円台(日経電子版)
2021年2月15日 9:35 (2021年2月16日 7:44更新) [有料会員限定]
さいごに
10年単位で切り取っていきましたが、当時の世界状況が良く見えますね。
1989年は、日本の銀行金持ち期。
2001年は、テック企業の幕開け期。
2011年は、石油業界の再興期。
2021年は、米中の巨大テック君臨期。
簡単に言い表すならばこんな感じでしょうか。
顔ぶれが大きく変わった中で、唯一共通していたのは米国企業の強さ。
10年間というスパンで今後を考えると、中国の台頭はさらに進むことが考えられますので、
・世界経済での米国+連合国と中国との対立。
・中国当局の国内企業に対する統制方針。
このあたりを注目しながら、10年後のランキングがどうなるかを楽しみにしたいと思います。
こちらもよろしければどうぞ。
では、ごきげんよう。
日本企業よ、がんばれ。