・医療保険制度改正法での主な改正内容
・「金融所得の公平な反映」が何をもたらすか
・封じられる特定口座(源泉徴収あり)
・国民健康保険(国保)4つの顔
・FIRE民の鉄板が崩れる
・大増税を無効化する最強の打ち手
・より重要となる資産運用の出口戦略
ごきげんよう、ぺいぱです。
このブログの内容は動画でも解説しています。
2026年5月29日に「健康保険法等の一部を改正する法律案」(医療保険制度改正法)が参議院本会議で賛成多数により可決・成立しました。
この法改正、現役世代の個人投資家には無視できない非常に大きな動きが含まれています。特に将来的にFIREをして資産収入だけで生活をしていこうと考えている方は、とても重要な話になります。
なお、ここから先は「社会保険料」「社会保険」「国民健康保険」「健康保険」……。似たような名前がたくさん出てきます(笑) たぶんわざと理解させないよう政府が分かりづらくしてるんだと、ぺいぱは勝手に思っていますが、各単語こういう位置付けだという補足をしておきましょう。
<社会保険料>
│
├─① 医療保険
│ ├─ 国民健康保険(自営業・フリーランス・無職など)
│ ├─ 健康保険(法人の役職員)
│ └─ 後期高齢者医療制度(75歳以上のすべての人)
│
├─② 年金
│ ├─ 厚生年金(法人の役職員)
│ └─ 国民年金(自営業・フリーランス・無職など)
│
└─③ 介護保険(40歳以上が対象)
つまり「医療保険」「年金」「介護保険」の全体を「社会保険料」と呼ぶわけです。
現役世代の会社員は「健康保険」「厚生年金」「介護保険(40歳以上)」を支払うわけですが、わりと世間ではこれらセットを「社会保険」と呼ぶこともあります。……ややこしいですねぇ。
細かく言えば、その会社員は制度上「国民年金」に同時加入しているので二階建てになっていますが、保険料は厚生年金に一本化されて徴収されています。
上記以外にも全額会社負担の「労災保険」、一部負担の「雇用保険」といった労働保険も存在していたりしますが、社会保険料とは基本的に別物です。ただ、まれに社会保障制度全体を指してこれらを含めることはあります。……話をしていても、混乱してきます(笑)
もう1つ、これも本筋とは直接関係ありませんが、シニアになっても会社に雇われている、または自分の法人の役員である場合も存在しますよね。その場合、
・健康保険は75歳で脱退となり後期高齢者医療制度に入る。
・厚生年金は70歳で脱退となる。
こんな扱いになります。
さて、なんやかんやと全体構造を触れてきましたが、このあたりの位置付けをご理解いただいた上でこの先を見ていただくと、より理解が深まると思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
医療保険制度改正法での主な改正内容
医療保険制度改正法での主な改正内容はこの通りです。
● OTC類似薬の薬剤給付の見直し:
鼻炎、胃痛、痛み止めなど、市販薬(OTC医薬品)でも代用できる日常的な医療用医薬品の一部について、個人の自己負担(薬剤料の4分の1)を新たに増やす。
● 高額療養費の年間上限の新設などの見直し:
医療費の伸びや所得に応じて月単位の自己負担額は見直すものの、長期治療のセーフティネットとして、新たに「年単位の自己負担上限額(年間上限)」を設けて負担を軽減する。
● 後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映:
確定申告の有無に関わらず、すべての金融所得(上場株式の配当や売却益など)を保険料の判定に含めることで、投資で稼いでいる高齢層の窓口負担(1〜3割)や保険料の不公平を解消する。
● 妊娠/出産に対する支援の強化:
出産の標準的な費用を「見える化」し、原則として妊婦に自己負担がかからない仕組みを導入するなど、経済的負担を減らして安心して出産できる環境を整える。
● 子育て世帯の負担軽減:
国民健康保険において、子どもの数に応じて課される保険料(均等割保険料)を半減する措置の対象を、これまでの未就学児から「高校生年代まで」一気に拡大する。
それぞれを細かくは触れませんが、今回の改正について厚生労働省の説明では、
「将来にわたり我が国の医療保険制度を持続可能なものとしていくために、現役世代を中心に保険料負担の上昇を抑制しながら、全世代を通じて、医療保険制度に対する信頼や納得感を維持・向上させる観点から、給付と負担の見直しを行うもの」
とされています。
「金融所得の公平な反映」が何をもたらすか
今回取り上げるのは「金融所得の公平な反映」という項目。
厚生労働省が公開しているこの制度の解説資料を見ると、大きく「後期高齢者医療制度における…」と書かれているため、一見すると「なんだ、75歳以上のシニアだけの話か」と見落としてしまいそうになります。ここに罠があります。
確かに、この法律の直接のターゲットは高齢者です。しかし、これを実現するために2028年目処で動き出す「マイナンバーを使った証券口座の全自動捕捉システム(勝手に名付けた笑)」は、年齢に関係なく、日本国内すべての証券口座がその集計対象になります。
つまり「高齢者の不公平をなくす」という大義名分で仕組みを整えたのち、それがそのまま現役世代の国民健康保険(国保)増へと忍び寄ってくる可能性が高い。
なぜならば、毎月の給与をベースに事業主が届け出た金額で機械的に算定される会社員の健康保険とは違い、国保は後期高齢者医療制度と同じ所得割方式なので、今回の改正と同じ土台に乗せやすいからです。
決して「自分はまだ若いから関係ない」と高を括ってはいけないということになります。
じゃあ、現役世代も対象となるのは一体いつなのか? 残念ながら現時点で、政府は具体的な時期をハッキリとは明かしていません。ですが、社会保障の歴史を振り返れば答えは明白。外堀を埋めて間髪入れずに全世代へと網を広げてくる。
2028年に高齢者向けでスタートする以上、現役世代も対象となるのは早ければその翌年、2029年や2030年といったすぐ目の前の未来だと見ておくのが自然でしょう。
さて、この改正の本質、政府の立場から言葉を組み立てれば
「支えてくれる人が減る」
「負担能力をより正確に測る」
「お金のある人に相応の負担を」
という制度思想であることが見えます。
一方で、個人投資家の立場から言葉を組み立てると
「いろいろな税金を取られた搾りかすのお金をかき集め、リスクとってコツコツ地道に運用し、そこで得た果実(利益)をようやく手に入れたら、20%も税金を取られた上で、さらに社会保険料が上乗せされる」
ということになります。劇場版「増税の刃:無限搾取編」といったところでしょうか。悲しすぎて涙も出ません。
封じられる特定口座(源泉徴収あり)
ここまでは、新制度の全体感を紹介してきましたが、具体的に会社員ではない個人投資家にはどんな影響が出てくるのかを考えてみましょう。
これまでは、証券口座で何百万円、何千万円とどれだけ利益確定させようが、特定口座(源泉徴収あり)で確定申告をしなければその利益は役所に見えませんでした。そのため、合法的に国保を安値に抑えることができたわけです。
しかし、冒頭でも触れたように2028年からは75歳以上を対象に、金融機関が国税庁に出すデータとマイナンバーとを紐付け、確定申告をする・しないに関わらず、すべての金融所得をデジタル連携で全件捕捉する仕組みに移行します。
これにより、個人投資家が証券口座で出した株の売却益や配当金のデータが、あなたの住む役所の国保算定システムへ、文字通り筒抜けになるわけです。
つまり、多くのFIRE民の定石となっていた「申告不要制度を活用した国保算定すり抜けルート」が、いよいよ完全に封じられる目算となったことを意味します。
会社員として社保に加入している人を除き、無職(FIRE民)や個人事業主、フリーランスが、特定口座(源泉徴収あり)で個別株や投資信託を解約して利益確定させた場合、近い将来その金額に応じて翌年度の保険料が容赦なく跳ね上がることになるわけです。
ただし、NISA口座についてはその対象外。……まぁ、不安を煽るつもりはないので、これはぺいぱのひとりごととして聞いて欲しいのですが、今回のように制度なんか政府の都合でコロコロ変わるわけですから、将来的にNISA口座が安泰のままかは保証できませんね。ここは金融庁の皆さんに頑張ってもらうしかありません。
国民健康保険(国保)4つの顔
会社員を辞めたFIRE民やフリーランスなど、75歳未満の誰もが加入する国保ですが、その保険料は、この「4つのサイフ」の合計金額で計算されています。
① 医療分(基本の健康保険料)
:全世代共通。病院の窓口負担が3割で済むための財源。
② 後期高齢者支援金分
:全世代共通。75歳以上の医療費をみんなで支える財源。
③ 介護分
:40歳〜64歳まで。別制度だが徴収は一緒。介護を支える財源。
④ 子ども・子育て支援納付金分
:全世代共通。少子化対策の財源として新たに上乗せ。
つまり、あなたの前年の所得がこれら4つのサイフすべてに連動して、毎月の国保支払額が決定しているわけですね。
繰り返しにはなりますが、将来、金融所得の国保算定が始まると、特定口座で確定した株の「譲渡益」や「配当金」のデータがダイレクトに組み込まれるようになります。
当然のことではありますが、株式等を解約して手元に戻ってきた元本部分には保険料がかかりません。あくまで値上がりして出た利益だけがその対象です。
ではその結果、実際の保険料がいくら増えるのか。自治体ごとに料率が異なるため固定値ではありませんが、ざっくりの目安を言うと、特定口座の中で確定した利益の約10%がそのまま翌年の保険料として上乗せされるイメージになるでしょう。
FIRE民の鉄板が崩れる
前回「FIRE1年目と2年目の住民税・国保・年金まとめ」でご紹介した通り、通常FIREおよびそれに準じたスローライフを目指す場合の定石といえば、まさにこの組み合わせでした。
・住民税非課税世帯をキープする
・国保の軽減措置をフルに受ける
・国民年金の免除を申請する
これらによって生活費以外の維持費を極限まで削ぎ落とし、必要な分だけ投資信託・ETFをスマートに切り崩して生活費を補う。いわば、資産はあるのにシステム上は低所得に見せる「老人に擬態した生活様式」により、息を潜めてひっそりと自由に暮らすのが、これまでの鉄板ルートだったわけです。
しかし、ご紹介しているような大転換によって、その前提が根底からひっくり返ろうとしている。つまり、見かけの低所得が通用しなくなり、住民税非課税世帯の特権や国保の軽減措置、年金免除といった「FIRE民の防衛陣形」がドミノ倒しのように崩壊することを意味します。
結果として、年間300万〜400万円を特定口座から切り崩して暮らしているケースでは、翌年の国保で年間数十万円の上昇が見込まれ、もちろん利幅が大きければ最高上限である「113万円(現在の賦課限度額)」に向けて、容赦なく爆跳ねすることになります。
そしてこの保険料の天井自体、毎年じわじわと引き上げられているのもまた、ぼくらが直面している現実です。現役世代で金融所得のデジタル連携が本格始動する頃には、この上限額がさらに引き上げられている可能性だって十分にあります。
大増税を無効化する最強の打ち手
しかし、絶望する必要はまったくありません。実はたったひとつだけ、鉄壁の打ち手が存在します。ポイントは、影響を受けるのがあくまで「国保」に対してだけである、という点です。
つまり、会社員が加入する社会保険(社保)には1ミリも影響がありません。冒頭で説明した「会社員には関係ない」というのは、まさにこのことを指しています。
例えば、個人で法人を設立し、そこの役職員として加入する社保の金額を決める基準は、受け取る給料(役員報酬)によって決まります。
役員報酬を「月額5万円」という額に設定したとしましょう。するとどうなるか。「会社負担」と「個人負担」を合わせて毎月おおよそ2.3万円程度の水準に抑えることが可能です。
もちろん月5万円の給料では生活ができないでしょうから、そのために個人の金融資産を取り崩していくことになります。ただ、特定口座でいくら利益が出ても会社員の場合は基本的に社保の計算には影響しません(※確定申告は必要なケースあり)。
今の日本社会において、現役世代の多くは会社員として社保加入し生活を送っている人が多いでしょう。そのため、今回ご紹介している大増税システム(正確には保険料って税金じゃないですが…)で影響を受ける人はそこまでいないかもしれません。
ただ、NISA枠を埋めつつも、特定口座(源泉徴収あり)の枠も使って資産運用を行っている人が多いのもまた事実。そして将来的に早期退職を念頭に置いているような方々にとって人ごとではありません。
おしらせ
「やわらか中学校」から生まれた4コママンガ「やわらかクエスト -お金と仕事と呪われし大陸-」の公式アイテムがついに登場! 現代社会における世知辛いお金や仕事の話をあえて王道RPG風な世界で描いてみたら、をテーマにnoteでお届けしている本作。登場キャラクターたちがこの度かわいいグッズになりました!
より重要となる資産運用の出口戦略
今回は「ついに始まる金融所得の社会保険料算定!高齢者から全世代へ広がる『FIRE封じ』の全貌」をテーマに話を進めてきましたが、いかがだったでしょうか。
FIRE民の「鉄板セオリー崩壊」という不穏な時代の足音が聞こえるからこそ、直前になって慌てて対策を探し始めるよりも、今のうちから自分の方針を定めて準備に動いておく。それこそが、大切な資産の寿命を伸ばす一番の防衛策だと思います。
政府は「貯蓄から投資へ」と声高に言っておきながら、一方で投資行動を萎縮させるような新制度を設けていく。非常にチグハグな動きに腹落ちはまったくできないわけですが……。
でもまぁ、シニアでの実施は決まり、現役世代もあとは開始時期だけと受け取れる段階に入っていますので、これからの資産運用においてはその出口戦略がより重要になります。
例えばこういうことです。
・収入を金融所得に偏らせずに複数分散しておく。
・NISA枠を埋めることをとにかく最優先する。
・分配金依存せず含み益を活かして計画的に取り崩す。
正直これら小手先の防衛策と比べると、法人化という打ち手はやはり強力です。ただし強力な打ち手には副作用もある。
法人設立や維持には費用も手間も時間もかかります。結局、個人で国保のままと法人化で社保加入。どちらが良いかは資産状況やライフスタイルによって異なりますので、まずはそこが検討の入り口になるでしょう。
あとはフルタイムじゃなくても、社保に入れるぐらいのペースで会社員をゆるくやる、という選択肢もあるかもしれません。
いわゆる「106万円の壁」(月額賃金8.8万円以上という要件)が2026年10月に撤廃されますので、
・週の所定労働時間が20時間以上
・雇用契約期間が2か月超
・従業員数51人以上の企業(対象企業は順次拡大予定)
これらを満たせば社保加入の対象になります。FIRE民にとっての何もしない自由とはやや矛盾する部分もありますので、まぁここは価値観次第でしょうか。
なお、今回紹介したマイナンバーカードでの金融資産把握に向けては課題も残されています。主にはこのようなところです。
・マイナンバー未登録層の壁
そもそもマイナンバーカードを持っていない人や、カードを持っていても証券会社にマイナンバーの登録をまだしていない人が一定数いることに対応する整備が必要。
・富裕層より少額投資家が影響
政府は「お金持ちの高齢者や富裕層から相応の保険料を取る」という大義名分を掲げているが、結果的にコツコツ投資の低・中所得層の負担が重くなりそうな矛盾。
ぺいぱ自身は、今回の改正とは別に、一足早く一般口座保有による重税を背負っていたこともあり、2027年頭に法人設立して社保移行することを決めています。
詳しくはこちらの回「FIRE民がたどり着いた結論:P/L思考・B/S思考を経てC/F思考へ。」で紹介しています。
皆さんは今回の話題、どのように受け止められているでしょうか。ぜひ率直な感想や、考えている対策案などを、コメント欄に書き込んで共有いただけると嬉しいです!
・医療保険制度改正法での主な改正内容
・「金融所得の公平な反映」が何をもたらすか
・封じられる特定口座(源泉徴収あり)
・国民健康保険(国保)4つの顔
・FIRE民の鉄板が崩れる
・大増税を無効化する最強の打ち手
・より重要となる資産運用の出口戦略
さいごに
この「やわらか中学校」では、ぺいぱの資産運用の実体験を中心にお金や仕事に関する話題をお届けしています。ぜひチャンネル登録・いいね・コメントをよろしくお願いいたします!
また、YouTubeサブチャンネル「ぺいぱのひとりごと」は、ぺいぱが興味関心のある話題を取り上げて好き放題喋り倒すラジオのような配信番組となっています。
そしてこの「やわらか中学校」から生まれた4コママンガ「やわらかクエスト -お金と仕事と呪われし大陸-」をnoteで連載中。中世RPG風の世界観でお金や仕事に関するあるあるネタを扱った作品となっていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
政府は、投資をさせたいのか、させたくないのか。それが問題だ。

