・そもそも野村総研の富裕層調査とは何か
・2019年、2021年、2023年の富裕層推移
・アッパーマス層の二極化はなぜ起きているか
ごきげんよう、ぺいぱです。
このブログの内容は動画でも解説しています。
今回は、2025年2月13日に野村総合研究所が公表した最新の富裕層調査を紹介していきます。この調査は、預貯金・株式・債券・投資信託・一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基にし、総世帯を5つの階層に分類、それぞれの世帯数と純金融資産の合計額を推計したものです。富裕層ピラミッドとしてもお馴染みですね。
・超富裕層(5億円以上)
・富裕層(1億円以上 5億円未満)
・準富裕層(5千万円以上 1億円未満)
・アッパーマス層(3千万円以上 5千万円未満)
・マス層(3千万円未満)
繰り返しになりますが、この統計は不動産などを含まない「純金融資産」を世帯別で見た基準となっています。そのため個人資産全体ではなく、主に流動性の高い資産の保有状況を示したものとなりますので、資産状況の一側面に過ぎない点には注意が必要です。
なお、ぺいぱ自身は2025年2月16日時点の純金融資産が6,039万円。現在は「準富裕層」に位置しています。2024年5月末に初めてこの層に到達。その後、同年8月の相場急落時に「アッパーマス層」に転落しましたが、9月末に返り咲いて以降、今日まで「準富裕層」をキープしています。つまり、そんな流動性も高いわけです(笑)
今回の話はまさにこの「アッパーマス層」が1つのキーワードとなっています。資産形成を進められている世帯では、この層に位置付けられる方が多いかと思いますので、ぜひ最後までお楽しみいただければ幸いです。
2023年版の富裕層ピラミッドで見えること
まずは最新のピラミッドです。

これを点で見るだけでは「ふーん」で終わってしまいますので、続いては2023年版を含めた過去3回分の推移に、参考情報として2005年版を加えて改めて見ていきましょう。
<階層別の純金融資産推移(05年・19年・21年・23年)>

※数字は四捨五入。
【出典】野村総合研究所
■日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計(2025/02/13)
■日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計(2023/03/01)
■日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計(2020/12/21)
ここから受け取れることは何でしょうか。ぼくが気になったことをざっとまとめていきます。
金額ベースで2005年と2023年とを比べると、「超富裕層 (5億円以上)」はおよそ3倍増。「富裕層 (1億円以上 5億円未満)」は2倍増。「準富裕層 (5千万円以上 1億円未満)」は1.83倍増となっています。
・保有資産が大きい層ほど増加率も高い。
・特に、2021年→2023年の増加が顕著。
・好調な株式市場や円安影響を受けた結果。
「準富裕層」以上は世帯数の増加率を金額のそれがいずれも上回っており、資産を持つ層がますます富を蓄積していることが見て取れます。
……
「アッパーマス層 (3千万円以上 5千万円未満)」は、2005年との金額ベース比較で1.14倍と微増に留まる一方、世帯数で見ると階層別で唯一減少に転じていることが分かります。今回の調査で最も特徴的な数字変動があったのがこの層です。
・2021年から2023年の間で大きく数字が減少している。
・2022年は株式市場が軟調で、この成否が影響した可能性がある。
・「準富裕層へ移行した世帯」と「マス層へ転落した世帯」とに分かれたと考えられる。
今回調査は、アッパーマス層が「成功すれば準富裕層へ、失敗すればマス層へ」という岐路であることをより明確にしただけでなく、薄くなる中間層の実態も示しています。投資を活用できたか否かが、資産階層の行方を大きく分けたと言えます。
……
マス層(3千万円未満)の純金融資産総額を2005年比で見ていくと1.38倍、世帯数ベースでは微増の1.15倍であり、緩やかに増えているように見えるものの、先述の通りアッパーマス層からの転落組で嵩上げされていることが伺えます。
・「1世帯あたりの資産額はほとんど増えていない」ことを示唆している。
・物価上昇や実質賃金低下の影響で「資産を増やせない世帯」が増えている。
2005年比での緩やかな世帯数増加は、主に核家族化や未婚率の上昇、高齢者の単独世帯増加などが要因と考えられます。その上で「アッパーマス層」を境に、一部が「準富裕層」に到達する一方、多くの世帯が「マス層」に飲み込まれたままである可能性があります。
アッパーマス層の減少から考察できること
ではここからは、タイトルにもある通りアッパーマス層の減少についてもう少し深掘りしてみましょう。 今回の調査レポートの中では
・近年の株式相場の上昇を受け、運用資産が急増したことで生まれた「いつの間にか富裕層」が多くいる。
との考察があります。これは「準富裕層」から「富裕層」だけでなく、「アッパーマス層」から「準富裕層」への移動も含まれます。こうした「いつの間にか富裕層」の特徴として、
・年齢は40代後半から50代、職業としては主に一般の会社員。
・給与収入の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持している。
・資産運用を金融機関担当者や親族/知人の勧めに任せ、自らは関与/関知していない人も一定数存在する。
・金融知識が十分ではなく、商品特性やリスクの理解が不十分なまま金融商品を購入する可能性がある。
・金融リテラシーが高くても、急増した保有金融資産の適切な分散投資方針や、富裕層向けの金融商品特性に関する知識が十分でないケースが見られる。
と報告されているのが興味深いところです。ここから読み解けるのは、「アッパーマス層」でそれなりの余剰資金を手にした人が、
(A)正しい情報・正しい知識を元にその後の行動をした人
(B)そうでない人
に分かれたということ。
(A)についてはS&P500やオルカン(全世界株式)、先進国株式といった主要インデックスへのコア投資。(B)については、より値動きの激しいとんがったインデックスや個別株、株式以外のアセットクラスへの過剰な投資などがイメージできます。
2022年から2023年までの株式相場というのは、下がってから上がるという構図だったことで、主要インデックスだけを積立し続けていれば、あとは放置していても十分に結果が出たボーナスステージだったわけです。加えて円安効果もプラスに働きましたね。
2021年の金融緩和相場。何を保有していても価値が上がったといっても過言ではなかったわけですが、ここで浮かれて翌年に大きなリスクを取り、大火傷して退場した層がそれなりにいた。こうしたことも、今回調査にあった「アッパーマス層」減少に現れていると考えられます。まさに明暗を分けたことになりますね。
もう1つ付け加えるとすれば、「マス層」から「アッパーマス層」へ這い上がっていく力も弱くなっている点でしょうか。近年の物価高や実質賃金低下などにより、余剰資金を作れない、資産運用どころではない。そんな「資産を増やせない層」が拡大しているという事実も見え隠れします。
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さいごに
今回は「2023年版 富裕層ピラミッドに見るアッパーマス層の二極化」というテーマで話を進めてきましたがいかがったでしょうか?
・お金持ちはよりお金持ちになる
・金融知識が多少乏しくても選択肢さえ間違わなければお金持ちになれる
現在の金融環境では、こうした傾向がより顕著になっていることが分かりましたね。
ぼく自身も、投資に関する知識が抜群に豊富というわけではありません。ただ、収入と支出の差を広げて余剰資金を作り、インデックス投資の良さや魅力を信じてそれなりのリスクを取ってきただけ。このシンプルな原則を守るだけで、準富裕層に到達できる可能性があるわけです。こうした取り組みは、一度コツを掴むとあとは本当に雪だるま式に大きくなっていきます。
(収入 - 支出) + (資産 × 運用利回り)
フロー ストック
さて、今回取り上げたポイントのほかに、調査レポートではこのようなことが触れられています。世帯年収1,500万円以上を目安とする「パワーファミリー」をさらに超える存在「スーパーパワーファミリー」です。
なお前提として、「パワーカップル」と「パワーファミリー」の違いは何なのか。これは明確な基準が存在しているわけではありませんが、
【パワーカップル】
子供のいない高収入な共働き世帯。ニッセイ基礎研究所の定義では「夫婦ともに年収700万円以上の世帯」を指す。
【パワーファミリー】
子供のいる高収入な共働き世帯。日経ビジネスの定義では「世帯年収1,500万円以上」を指す。
このように、主には「子どものあり・なし」で区分されているようです。ではこれを踏まえて今回調査で触れられていた「スーパーパワーファミリー」について。
【スーパーパワーファミリー】
子供のいる高収入な共働き世帯。野村総研の定義では「世帯年収3,000万円以上」を指す。
女性の社会進出加速や働き方の多様化に伴う就労機会の増大によって、今後「スーパーパワーファミリー」の増加が見込まれることが指摘されています。つまり、こうした強いフローを持つ世帯がしっかりと資産形成を進めていくことで、将来的にはさらに富裕層が増えていく。そんな予測です。
今回、「アッパーマス層」からさらに上に行けるか否か。この辺りを中心に話をしてきましたがいかがだったでしょうか? まさに「持つ者」と「持たざる者」の関ヶ原がこの層。2023年調査はその縮図と言えたのではないでしょうか。
皆さんは今回の調査でどのようなことを受け止められたでしょうか? 今回紹介した見立てはあくまでぼくの視点ですので、他にも「こんな見方があるよ」とか「こう受け取れるんでは?」などあると思います。
ぜひ、ご意見・ご感想などをコメントいただけるとうれしいです。
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
天下分け目のアッパーマス層。