資産運用で失敗したことのない人は「ほったらかし投資」を続けられるのか:投資の黒歴史から考える失敗経験の価値
・若い世代の金融資産が5年で6割増
・数字の派手さに隠れていること
・ぺいぱの投資黒歴史
・怪我をしたことのない人が掴んだ王道
・なぜ失敗経験が必要なのか
・ただし失敗から学べるとは限らない
ごきげんよう!ぺいぱです。
このブログの内容は動画でも解説しています。
https://youtu.be/JM4P2e4gWK8
NISAの新制度が始まって、まもなく丸3年。若い世代が「預金より投資」へ一気に動いている、なんていうニュースを最近よく目にします。NISA貧乏なんて言葉が生まれたのも最近でしたね。
自己投資か金融投資か、そんな議論は今でも絶えませんが、生活費を確保した上で、自身の判断として前のめりに投資をする。これ自体は良いことだと思います。
ただ、ぼくはひとつ気になることがあります。それは、2024年以降に投資を始めた人の多くが、まだ大暴落と言える相場を経験していない、ということです。
ぼく自身、資産運用では何度も痛い目を見てきました。個別株で100万円、暗号資産で300万円超。損失につながらなくても、急落局面で肝を冷やすなんて経験もたくさんあります。
そういう積み重ねがあったからこそ、究極につまらない退屈な投資手法とも言える、オルカンのほったらかし投資を2021年からいままで続けられているのだと思っています。
さて、つみたてNISA開始の2018年以降、ネット証券で低コストのインデックスファンドを地味に積立していく。こんな座組が一気に広まったと思います。
ぼく自身は紆余曲折経てここに流れ着いたわけですが、現代の個人投資家は最初からそうした最適解が提示されている、とても恵まれた環境にあるわけです。
ただ、思うこともあります。主要インデックスを長く持ち続けるだけ、という誰でもできそうなことが、実は誰でもできない。これは前回ご紹介した通りです。
過去の失敗を経験している人たちは、なぜこの退屈でつまらない手法がもっとも合理的なのかを体でわかっている。
しかし、いきなりこの最適解(ネット証券+低コストの広く分散されたインデックスファンド+積立)を掴んだ個人投資家は、その本質を知らない。もしかすると近年の上昇相場での恩恵で「自分には投資の実力がある」と勘違いしている人もいるでしょう。
つまり、最初から最適解で始めた人も、結局その後に欲が出て自分でいろいろといじり出し、怪我をしてまた最初に戻っていく。そんな構造にあるのではないかとすら思うわけです。
そこで今回は「資産運用で失敗経験をしたことのない人が初手でインデックスファンドを選んだ場合、コツコツ・たんたん・中長期でやりつづけることが果たしてできるのか」を考えてみたいと思います。
若い世代の金融資産が5年で6割増
先日、日経電子版にこのような記事がありました。
総務省が行った2024年の全国家計構造調査では、世帯主が30歳未満の世帯の金融資産は、平均316万円。5年前より約6割増えたそうです。
大きく変わったのは、その中身です。金融資産のうち、株式や投資信託の割合は24.9%。5年前から17ポイントも上がりました。金額にすると79万円で、5年前の5倍です。一方、預貯金の割合は68%まで下がっています。
マネーフォワードの調査では、2025年の新社会人の38%が、初任給の一部を投資に回していました。2022年以前に入社した人たちは10%だったので約4倍です。
背景にあるのは新NISAの開始、株高、そしてインフレで現金の価値が目減りしていること。さらに、将来への不安もあります。若い世代ほど「公的年金にはあまり頼れない」と考える傾向があるそうです。
ただし記事では課題も指摘されています。給料が高くて投資に回せる人と、余裕がない人との二極化。そして、知識が追いついていないことです。
数字の派手さに隠れていること
「5倍」「6割増」と聞くと、若い人たちがみんな儲かっているように感じますよね。でも、ここは少し冷静に見たほうがいいと思います。
まず、増えた分の多くは株高による評価額の上昇です。全部が新しく積み立てたお金ではありません。相場が下がれば同じ勢いで減ります。
それから、これは平均値です。一部の人の大きな資産が全体を押し上げている可能性もあります。
そして、いちばん気になったのがこの数字。
20代以下で投資信託を買ったことがある人は、2016年の約3倍に増えました。ところが、金融知識テストの正答率はむしろ下がっているそうです。
記事では、「初任給をもっと投資に回せばよかった」と答えた人が37.5%いた、とも紹介されていました。
これは、株高を見たあとの後悔ですよね。もし相場が下がっていたら、同じ人たちが「投資なんてしなければよかった」と答えていたかもしれません。
つまり、若い世代は「道具」は手に入れた。でも、それを使いこなす経験はまだこれから。ぼくにはそう見えました。
ぺいぱの投資黒歴史
ここで、自分の話を。
ぼくが株式投資を始めたのは2004年です。前回も少し触れましたが、日本の個別株のデイトレードばかりをして、4年間で100万円を失いました。
そして、もうひとつの大きな怪我が暗号資産です。こちらは2017年末のバブル期にボーナスなどを全軍突撃させて700万円がわずか2週間ほどで半分以下になりました。300万円超の損失です。
その後、2020年3月のコロナショックでは、持っていた海外株が大きく下がるなか、無の境地で何もせずに乗り越えました。2021年からはオルカンに一本化し今に至ります。
他にもゴールドを高値でジャンピングキャッチした話とか、2007年からの10年間を銀行預金だけで過ごしたとか……。
細かい事例もたくさんありますが、要はぼくはこうした失敗をしてきたからこそ、いま「ほったらかし」ができている。投資の世界では「握力」とか「鋼のメンタル」ともいいますね。こういうことが鍛えられたわけです。
逆に言えば、怪我をしてこなかったら、ほったらかし投資なんて続けられなかったと思います。
怪我をしたことのない人が掴んだ王道
いまは、ネット証券で主要なインデックスファンドを積み立てる、という資産運用の王道、いわば最適解を最初の一手で掴む人が多い時代です。
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を積み立て購入しているなんていうのはまさにその典型です。
個人的には初手でこれをやれるというのはすごく幸せなことだなと思うわけです。
YouTubeやブログなどで、実際にそういう投資をしている人たちの発信が大きいでしょう。これは、とてもポジティブなことです。ぼくは、ここにたどり着くまでに17年かかりました。
ただ、最適解を知っていることと、最適解を続けられることは別の話です。果たしてこうやって資産運用を始めた人たちのどのぐらいが、そのままほったらかしでやっていけるでしょうか。
もちろん2024年以降に始めた人たちも、短期的な急落は経験しています。2024年8月5日には、日経平均が過去最大の4,451円安を記録しました。でも、あの下げは比較的すぐに戻りましたよね。
本当の試練は、下げの「深さ」だけではありません。何年も下がり続けたり、停滞したりする「長さ」です。
ちょうどいまAI相場の足踏みが続いていて、SNSでは「オルカンを解約」した、なんていう声もちらほら見かけます。いまの相場は、AIへの先行期待で盛り上がっている面もあるので、ぼくは20%、30%下がっても驚きません。
そのとき、怪我をしたことのない人が掴んだ王道は、本当に長続きするのか。新NISA世代にとっての本当の試練はこれから始まるのかもしれません。
なぜ失敗経験が必要なのか
ぼくは、長期投資を一人で続けるには、致命傷にならない範囲の失敗経験が必要だと思っています。理由は3つあります。
① 耐えられる下落は体でしか分からない
リスク許容度の診断で「20%の下落なら大丈夫」と答えても、実際に含み損を抱えたときの反応は別物。周囲にアドバイザーがいれば、その人が歯止めをかけてくれます。でも、一人で投資するなら、その役割を果たすのは自分の失敗経験だけです。
② 失敗しないもまた失敗
怖がって預金だけで過ごすのも、インフレの下では毎年少しずつお金の価値を失う「見えない怪我」です。この怪我は痛みがないので、気づけず、学びにもつながりません。
③ 大事なのは致命傷にしないこと
失敗は、残高が小さいうちに経験するのが理想です。10万円が30%下がっても3万円。授業料として済みます。危ないのは、上昇相場の成功体験だけで資産が大きくなり、そこで初めて大きな下落を食らうケースです。
ちなみに、もし歴史的な大暴落が来たら、ぺいぱ自身の純資産は最悪3,400万円ほど減るかもしれない。こんな試算を以前の動画でお届けしました。
3,400万円という数字を、それなりに落ち着いて受け止められるのは、過去に何度か数百万円単位で痛い目を見てきたからだと思います。
ただし失敗から学べるとは限らない
とはいえ「失敗すれば学べる」という簡単な話でもありません。
失敗したあとに「次こそ取り返す」とリスクを上げる方向に進むと、それは学びではなく傷口を広げることになります。失敗の価値が生まれるのは、自分の限界を知り身の丈に合った方法に戻ってこられたときです。
では、失敗をしたことのない人はどうすればいいのか。
ひとつは、頭の中で怪我をしておくことだと思います。先ほどのシミュレーションのように、自分の資産がどれだけ減りうるのかを、金額で先に見ておく。それだけで、本当に下がったときの衝撃はかなり変わります。
もうひとつは、期待を控えめに持つことです。冒頭で紹介した記事には、27歳女性の例として、米国株の期待リターンを年3〜5%と控えめに見積もり、NISAは老後資金として基本的に取り崩さないと決めている、なんて紹介がありました。まさにこういう自分なりのルールがある人は下落相場でも強いと思います。
おしらせ
「やわらか中学校」から生まれた4コママンガ「やわらかクエスト -お金と仕事と呪われし大陸-」の公式アイテムがついに登場! 現代社会における世知辛いお金や仕事の話をあえて王道RPG風な世界で描いてみたら、をテーマにnoteでお届けしている本作。登場キャラクターたちがこの度かわいいグッズになりました!
さいごに
怪我をしたことのない人が掴んだ最適解は長続きするのか。その答えは、誰にも分かりません。
ただ、怪我は悪いことばかりでもない。致命傷にならなければ、それが長く続けるための握力を育ててくれます。
いずれ、誰もが一度は痛い失敗を体で感じることになるのでしょう。なので、大暴落が来る前に小さな怪我を重ねておく。そんな考え方もあるのではないでしょうか。
皆さんの投資での「いちばん痛かった失敗」は何ですか? よかったらコメントで教えてください。
この「やわらか中学校」では、ぺいぱの資産運用の実体験を中心にお金や仕事に関する話題をお届けしています。ぜひチャンネル登録・いいね・コメントをよろしくお願いいたします!
また、YouTubeサブチャンネル「ぺいぱのひとりごと」は、ぺいぱが興味関心のある話題を取り上げて好き放題喋り倒すラジオのような、ながら聴き用コンテンツとなっています。
そしてこの「やわらか中学校」から生まれた4コママンガ「やわらかクエスト -お金と仕事と呪われし大陸-」をnoteで連載中。中世RPG風の世界観でお金や仕事に関するあるあるネタを扱った作品となっていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
ということで、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
・若い世代の金融資産が5年で6割増
・数字の派手さに隠れていること
・ぺいぱの投資黒歴史
・怪我をしたことのない人が掴んだ王道
・なぜ失敗経験が必要なのか
・ただし失敗から学べるとは限らない
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
投資の失敗は小さいうちに済ませておけ。

