・新NISAのパニック売り
・忍耐強い人こそが勝つ
・稲妻をカメラに収める
ごきげんよう、ぺいぱです。
このブログの内容は動画でも解説しています。
7月末から大荒れとなった株式市場。特に東京市場は記録尽くめでしたね。
7月31日に行われた日銀金融政策決定会合にて追加利上げが決定。政策金利の水準は0.25%程度とした上で、過去の利上げ局面において上限となった0.5%の壁について植田総裁が「特に意識していない」と語るなど、タカ派姿勢を見せたことをきっかけに相場が急変。
日経平均株価は7月11日につけた史上最高値4万2,224円から下落率は一時25%に達するなど、過去の急落局面と比べても最速ペースで崩れていきました。
このタイミングに合わせて為替市場でも大きく円高に振れるなど、金融市場全般がもはや疑心暗鬼な状態となり乱高下。ある種パニック売りの様相を呈したわけです。
もちろん、米国での経済指標が振るわなかったことで景気後退懸念が出てきたことも理由の1つですがその米国株式市場はそこまで荒れませんでした。
今回のことを振り返ると、結局のところ相場を左右するのは実体経済と金融政策である、ということが証明されたとも言えますね。
今年1月に新NISAが開始になり、これをきっかけとして資産運用を始められた方も多いことでしょう。7月中旬まではほぼ一本調子で上昇を続けてきましたから、このタイミングで初めて元本割れを経験しているなんて方もいるかもしれません。
興味深いデータがあります。
国内公募の追加型株式投資信託(ETF除く)は8月7日、設定額から解約額を差し引いた資金流出超過が1,609億円となったそうです。たった1日で1,000億円以上のまとまった資金流出となるのは、新NISAが始まってから初めてとなります。
この日は純資産総額上位25位までの全ファンドで資金流出となっており、特に人気が高い「eMAXIS Slim」シリーズでの流出額が大きいことも目立ちます。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)/▲226億円
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)/▲78億円
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス/▲16億円
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)/▲10億円
※QUICK資産運用研究所調べ
※資金流出額は8月7日の日次推計値ベース
ご覧いただいたように、オルカンはたった1日で78億円が流出しています。新NISAでの人気No.1商品と言えるこのオルカンが、今年に入ってから日次ベースで1億円以上の資金が流出するのは初めての事態です。
この前日、オルカン基準価額が直近では最も下げており、これに耐えられなくなった投資家がこぞって売却に動いたことが見て取れます。
ここ数日の相場を見ていると「売られているから売られる、買われているから買われる」こんなことが言えるのではないでしょうか。
5日(月)の日経平均株価は前週末比4,451円安(▲12.4%)で終え、ブラックマンデーと呼ばれる1987年10月20日の3,836円安を抜き、過去最大の下げ幅を記録。その翌日6日(火)は前日比3,217円高(+10.2%)で終え、こちらも1990年10月2日を上回り過去最大の上げ幅になりました。
先進国の主要株価指数とは思えない変動幅であり、その要因は自動売買の影響とも新NISA勢のパニック売りとも言われています。ただし冒頭でも触れた通り、乱高下してきた相場もだいぶ落ち着きを取り戻してきた印象もあります。
こういった不安定相場は二番底のようなことも起こり得ますし、先日の地震により地政学リスクもより高まっています。また、日経平均の急回復や円安傾向に動いていったのは、日銀内田副総裁による「金融資本市場が不安定な状況で利上げをする事は無い」というハト派発言をきっかけにしたものでした。
このように様々な変数が複雑に絡み合う中で、将来をズバリ予測することはできませんが、今回の出来事は先日もお話しした著名投資家ウォーレン・バフェットさんの言葉がまさに当てはまりますね。
「株式市場はせっかちな人から忍耐強い人へとカネを移す装置」
結局のところ、株式相場というものは色々なことが発生しますが、長く居座り続けたものだけが旨味を得る場所だということです。
事実、8月6日に直近の最安値である22,688円に落ち込んだオルカン評価額は、8月9日には23,627円まで回復しています。先ほど7日に78億円が流出したと話しましたが、これらの投資家はまさに底値で手放してしまったことになります。皆さんは踏み留まれたでしょうか?
不安定な相場環境にあってこの「やわらか中学校」やサブチャンネルの「ひとりごと」にコメントをいただいてる方々は、このタイミングに乗じて安値で拾うためにエントリーをしようなんて声も聞こえてきますし、一方では不安だっていう人もいらっしゃって、投資経験の差もありますが実に色々な受け取り方がされているわけです。
ぼく自身はというと極めて冷静でした。いや、むしろこういう不安定な状況を楽しんでいる自分もいたように思います。株式市場というのは=群衆心理の見える化だとも言えます。
急激な値動きの裏には色々な人間ドラマがあるわけで、そういうことを想像するだけでなんかワクワクしてしまうんですよね。勝負の仕方を誤って市場から撤退せざるを得ないような人も出ているでしょうから、不謹慎かもしれませんが。
また、急激に下落する相場が来ると、それに関連した情報発信も増えていきます。これはSNSはもちろんのこと、テレビや新聞などの旧来メディアでも同様です。
金融市場を皆がどう見ているのか。多角的に情報を仕入れるにはすごく便利な状態でもあるわけです。
「買い出動」について考える
さて、そんな中でぼくは結局「買い出動」をすることはできませんでした。「買い出動」とは相場の時期をみて売買に出動することを指す言葉です。
株価の大幅下落を「バーゲンセール」と呼んで買いに走る投資家は少なくありません。むしろこういう積極的な行動が資産を大きく伸ばすことにもなるからです。
下落相場時の投資家の行動は大きくこのように分かれると思います。
A. パニック売りをする(売る)
B. 静観する(維持)
C. 買い出動する(買う)
Aは最もやってはいけないことです。少なくてもBでありたい。あわよくばCができると良い。個人投資家の視点はそんな感じでしょうか。
これ、投資家経験に伴ってAからCへの階段になっているとも言い換えられますね。ぼくも最初はAでした。2004年に株式投資をはじめて最初の大荒れ相場は2006年1月のライブドアショックでしたが、もう完全にパニック売りに走っていたわけです。
その後は忍耐強さも身についてきまして、2020年3月のコロナショックでは、連日のように下がる株式市場の様子に、まったく良い気持ちはしませんでしたが、保有株を手放すことは一切しませんでした。
2021年6月に保有商品をオルカンへ一本化する前の時代だったわけですが、ここで耐えたことが今の資産を築いた原動力にもなっているという観点で、ぼくにとっては大きな成長でした。
そういう意味では今回ぼくはBだったわけですが、もう少し分解して正確に言うとこうなります。
B-1. 身動きが取れない
B-2. 方針を変えない
前回はB-1、今回はB-2と、同じ静観でも位置付けは異なります。言葉遊びになりますがコロナショックの際は余剰資金もなかったですし呆然と下落相場を見続けるしかなかったので、結果的に「生還」したという表現の方が正しかったかもしれません。
このように、長く資産運用をしていると実に色々な経験の場があります。場数を踏むことで投資家のたくましさというのは培われていくわけです。
これらはまさに前回取り上げた「下落相場でも冷静さを保つために必要な7つのこと」でもまとめて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
では「買い出動」について改めて考えてみたいと思います。
今回の急落相場においてぼくは2つのことが頭を過ぎりました。
・オルカンをスポットで買い増し(コア)
・暗号資産をスポットで買い増し(サテライト)
そう、コア商品、サテライト商品を安値で拾おうということです。
現在、現金保有が700万円ほど。手元資金は通常300〜500万円前後としていますから、買い出動時の額としては300万円程度。ぼくも他の個人投資家と同様にこんなことを考えていましたが、結果としては実行しませんでした。
理由としては明確で、結局のところ凡人であるぼくが資産運用で成果を出すためには、自分の意思を徹底して挟まないことだと確信を持ってるからです。
ここでぼくの投資家歴を振り返ってみます。
第一期:2004年-2007年 日本の個別株時代(短期保有)
第二期:2017年-2021年 海外の個別株時代(中期保有)
第三期:2021年-2024年 オルカンコア時代(長期保有)
第一期はいわゆるデイトレードや数週間で売買を繰り返すスイングトレードが中心でした。結果的に100万円ほどの損失を抱えて相場を退場。その後、10年間株式投資から距離を取るきっかけとなりました。
第二期は自分が利用する身近な商品・サービスを提供している企業の米国・中国個別株を長く持つことを念頭に再スタートをしました。しかし、結果としては現金不足で商品を売却したり、買い替えたりをしていました。利益はそれなりに出ましたが、手間も時間もそれなりにかけていたことも忘れてはいけません。
第三期にあたる現在はオルカンをコアに据えてとにかく保有し続ける。買い増しをしても売却はしない。そういうスタンスで臨んでいます。結果だけ見れば、これがぼくの投資家人生において最も良い成績を収めていることになります。
理由は先ほど述べたように意思を挟まないから。具体的にはすべて自動化していることです。銀行口座から証券口座への振り込み、そしてオルカンの買い付け。これらを全自動で行うように設定しています。
2021年7月から2023年12月までは毎月30万円分を毎営業日買い付け。新NISAが開始となった2024年からは年初に360万円分をほぼ一括買い付け。8月からは毎月1日に10万円分をdカード買い付け。こんな変遷を辿っています。
オルカンという商品を選んだのは「投資地域を選ばない」こと。であれば「購入タイミングも選ばない」。これがぼくの投資スタイルです。
仮に株式市場の大暴落時に買い出動をしたとしましょう。きっとぼくの場合、
上手くいったら:
「なぜもっと買い増さなかったんだろう…」
上手くいかなかったら:
「なぜ買い出動なんてしたんだろう…」
このようにどっちに転んでも悶々と考えてしまうでしょう。であればもう考えない。タイミングも商品も最初に決めた設定通り「コツコツ・たんたん・中長期」でいく。これこそがベストアンサーなんだと考えているわけです。
アマチュアはミスを無くすことが重要
チャールズ・エリスさんの著書「敗者のゲーム」ではこのような説明がされています。
「テニスにおいて、アマチュアは相手に負けるのではなく、自分のミスで自滅することが多い。」
これを資産運用に置き換えてみるとどうなるでしょうか。
市況によって売買を繰り返せば、時間も手間も税金もかかるし、結果的に上手くいかない。動けば動くほどミスが生まれる。そんなことが言えます。
つまりはタイミングを図る投資はしていけないと述べられているわけです。本書では相場が大きく上昇する日、つまりベストデーを「稲妻が輝く日」と表現しています。
S&P500は、1980~2016年での年平均リターンは11.4%ですが、
・ベスト10日を逃した場合=9.2%
・ベスト20日を逃した場合=7.7%
このようにベストデーを逃すとどんどんリターンが低下をしていきます。そして興味深いのはそのベストデーは、激しい下げ相場に遭遇した後に発生しているということです。
相場の急落局面で慌てて売却に動いてしまうと、再度エントリーするタイミングを図るのは難しくなります。及び腰になるからですね。今回の急落で新NISA口座商品を慌てて売却した個人投資家にまさに当てはまります。
だからこそベストデーに居合わせるためには、もはや出たり入ったりを繰り返すのではなく、相場に居続けることが大事である、タイミングを図る投資をしてはいけない、ということです。
「敗者のゲーム」ではこれを「稲妻が輝く瞬間に居合わせる」と表現されています。それを実行するためには、
① 資産運用に回す資金を確保する
② 投資する指数(インデックス)を決める
③ 一括か積立かの購入方法を決める
④ 実行してあとは放置する
これが多くの凡人個人投資家にとっての最適解だと言えますし、ぼく自身もこのスタイルを貫いてきたからこそ今があります。そしてこのシンプルな構図を動かしたくない。これがぼくの強い信念だというわけです。
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さいごに
今回は「株式投資でタイミングを計るべきでない理由」について話をしてきましたがいかがだったでしょうか?
ここ最近、金融相場と同じかそれ以上に大荒れなのが天気ですね。ぼくの住んでいる地域でも急な大雨や雷が頻発しています。群衆心理によって形成される株式市場とは違い、人知が及ばない分野の代表格が天候ですから、こちらの方がよっぽど手に負えません。
ぼくは空模様をスマホのカメラに収めることが良くあります。面白い形の雲とか、逆に雲ひとつない晴天とか。その中で稲妻が落ちる瞬間を収めたことは何度もありました。
稲妻は、その力強さや禍々しさなど、自然が作る芸術だとぼくは感じます。
で、この稲妻が落ちる瞬間をカメラに収めるためには、常に窓越しにカメラを構えておく必要があります。音速よりも光速のほうが速いわけですから、「ドーン」となった後にシャッターを切っても遅いわけです。
素人が稲妻をカメラに収めるにはどうするべきか。これにはもう動画撮影をし続けて稲妻が落ちる瞬間を収め、あとから静止画に切り出すしかありません。
ソファーにいながら、音がしてからすぐに窓へ駆け寄っているようでは一生カメラに稲妻を収めることなんてできません。つまり今回お話ししたような上昇相場を掴むというのはこういうことなのです。
人生はノーコンティニュー!悔いのないようにやっていきましょう。
では、ごきげんよう。
稲妻を扱えてこそ真の勇者。